『南くんが恋人!?』南くんの死を受け入れたちよみ 岡田惠和脚本が描いた真意とは

『南くんが恋人!?』岡田惠和脚本の真意とは

 1987年に刊行され、過去4度にわたってドラマ化されてきた内田春菊の漫画『南くんの恋人』。その初の男女逆転版『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)は全体的に明るいタッチでありながら、丁寧に描かれる、人が人を思う気持ちに目頭が熱くなる作品だった。

 ついに自分の家族にも小さくなった南くん(八木勇征)の存在を明かしたちよみ(飯沼愛)。最終回では、南くんが遺伝子について研究する父・晴幸(沢村一樹)の知り合いに体を調べてもらう。だが、それではっきりしたのは、南くんがもうこの世には存在しないという事実。早苗(国仲涼子)が言っていたことは本当だったのだ。

 そのことをみんなが考えないように過ごす中、楓(木村佳乃)が突然、東日本大震災の時に百合子(加賀まりこ)から言われたことについて話し始める。今から13年前、震度7の揺れと大津波が日本各地を襲い、その被害状況が連日連夜テレビで放送された。自然災害ゆえに誰を責めていいかわからず、どうしてこんなに悲しいことが起きるのかと途方に暮れた人も多いだろう。

 そんな中、百合子が楓に語ったのは遺された者としての決意だった。ある日突然、地震や津波で命を奪われた人たちのように、どうしようもなく悲しい亡くなり方をする人はいる。だけど、亡くなり方が悲しいからといって、その人の人生まで可哀想だと決めつけてはいけない。生きている人にできるのは、その人が楽しく生きた時のことを思い出し、幸せな人にすることーー。

 おそらくここが最も、本作を手がける岡田惠和の伝えたかったことではないだろうか。原作漫画『南くんの恋人』では、最終的に小さくなったちよみが死んでしまう。岡田が手がけ、今作でちよみの父・信太郎役を演じる武田真治が主演を務めた1994年のドラマも同じ結末を辿るが、あまりに辛すぎる展開ゆえに主に子供の視聴者たちから「ちよみが可哀想」という投書が寄せられ、最終話だけちよみが死なないバージョンも制作された。

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