二宮和也の演技力の凄さが詰まった『ブラックペアン2』 渡海と天城を別人にする“声と仕草”
現在放送中の『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)に、前作『ブラックペアン』(2018年/TBS系)の主人公・渡海征司郎(二宮和也)が登場した。
かつて“オペ室の悪魔”と呼ばれ、執刀医が手術を失敗した際の挽回を請け負う代わりに、辞表を提出させ退職金を巻き上げることから「患者を生かすが、医者を殺す」ともいわれた渡海は、最終回で東城大付属病院を去ったはずだった。それが物語も終盤に差しかかってきた『シーズン2』にやってくるとは始まった当初、誰が考えただろうか。
『ブラックペアン』渡海の人気は高く、続編を熱望するファンは多かったが、発表された続編『シーズン2』の主人公は天城雪彦という別人。しかも渡海と同じく二宮和也が演じるとなれば、渡海が『シーズン2』に登場するのは難しいだろうと思っていた。顔が瓜二つの渡海と天城の関係性が最も気になるところであり、おそらくそれが物語の鍵となることは予想できたがまさしく“それ”がこのように作用してくるとは。もう“それ”がなんなのかを知っている人も多いだろうが、ここではあえて触れないようにしたい。
とにかく、9月1日に放送された第8話には二宮演じる天城と渡海が登場した。同じ俳優が演じる別人。その2人が同時に出てきたからこそわかる、はっきりとした“違い”、つまり二宮の演じ分け、演技のこだわりがそこにはあった。
渡海と天城は、声が違う。天城が渡海と自分との関係に気がつき、渡海のことを調べ始めた頃、佐伯(内野聖陽)に渡海から連絡が入った。「あ〜、もしもし佐伯センセ?」と話し出す渡海の声は低めのトーンでちょっと気だるげで、ボソボソしている。ただ「邪魔です」といういつもの言葉だけははっきりしている。一方の天城は、明るめのトーンでいつも楽しそうにはきはきしゃべる。でも明るくて親しみ
があるわけではない。天城は手術をするために、患者やその家族に全財産の半分を賭けさせ二者択一のギャンブルをさせるが、天城にとっては、患者とのやりとりも手術でさえもギャンブル。その話し方はギャンブルの最中、相手の出方を見て楽しんでいるような雰囲気を感じさせる。
さらに渡海と天城は、姿勢や佇まい、歩き方が違う。佐伯と電話で話している時の渡海は机に座っていたが、その背中は丸まって猫背になっていた。佐伯や世良の前に現れた時には。やっぱりちょっとだるそうで、一歩一歩が重そうな独特の歩き方でやってきた。天城は割とシャッキリと立ち、歩く姿もテンポがいい。演じているのは二宮なので背格好が一緒なはずなのに、改めて2人を見比べると渡海の方が背が低いように感じてしまうから不思議である。