水谷果穂が『ブラックペアン』で改めて感じた“芝居の楽しさ” 俳優業11年目での気付き
TBS系日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』で宮元亜由美役を再び演じる水谷果穂。6年ぶりの続編に臨む心境や、二宮和也との共演、サイドストーリーでの新たな一面、そして11年目を迎えた俳優人生について語ってもらった。緊張から余裕へ、役への愛着、現場での学び。成長を感じさせながらも「お芝居が楽しい」という初心を失わない彼女の素顔に迫る。(編集部)
“素の宮元”を演じてより愛着が湧いた
――6年ぶりの続編ですが、どんなお気持ちで撮影に臨んでいますか?
水谷果穂(以下、水谷):最初はニュースで「『ブラックペアン』シーズン2をやる」と知って、「キャストもお話も変わっちゃうのかな」と思っていたんです。そんな中、また同じキャスト、さらには自分も出演できると聞いたときには、すごく嬉しかったですね。シーズン1のときにはずっと緊張していましたが、今回はそれとは違った“いい緊張感”を持ちつつ、久しぶりに学校の仲間に会えたような、和気あいあいとした雰囲気も味わいながら撮影できています。
――以前よりも、少し余裕ができたと。
水谷:そうですね。今思うと、前回はとても緊張していたと思います(笑)。私の場合、みなさんが何か掛け合いをしたあとにパッと一言言うようなセリフが多いので、「そこでNGを出したらどうしよう」って。でも今はそれがなくなって、そのシーンに集中できるようになりました。今でも余裕はないけれど、“一言言うのも精いっぱい”みたいな状態からは抜け出して、“自分もその世界に入れている感覚”が前よりも強くなったかなと思います。
――これまでに撮影した中で、印象的だったシーンも聞かせてください。
水谷:会議室のような場所で天城先生(二宮和也)の紹介VTRが流れたあとに、ご本人が登場するシーンで役としても、自分としても、初めて天城先生を見たんです。そのときに「これが天城先生なんだ……!」と、もう鳥肌が立つくらいの感動があって、あのシーンは本当にすごかったです。台本で読んでいた天城先生より何倍も魅力的に見えて、今でも記憶に残っています。
――ご自身と役の感情がリンクしたからこそ、ですね。二宮さんと撮影の合間などにお話されることはありますか?
水谷:そんなに機会は多くないですけど、夜遅くまで撮影したときには「終電、大丈夫?」とか、気さくに話しかけてくださります。すごく自然体な方なのに、お芝居になると二宮さんに引っ張られるというか、引き込まれる感覚があって。もちろんテストや段取りの段階でもそうなんですが、本番になると芝居を大きく変えているわけではないのに、グッと何かが変わるんです。二宮さんにしかないパワーのようなものを、今回もすごく感じながらやらせてもらっています。
――話し合いの中心にいるのは、やはり二宮さんなのでしょうか?
水谷:私が居合わせた場面では、どちらかというと二宮さんは周りの意見を聞いているように感じました。もちろん、ご自身の中でもすごく考えられていると思うんですけど、自分で考えてきたものと、周りの意見とのバランスを大切にされるようなイメージがありますね。
――今回の現場で、俳優として学びになっていると感じることはありますか?
水谷:『ブラックペアン』の現場は、スタッフさんも演者の方たちもワンカット、ワンシーンへの意識が違うというか。本当にちょっとした一言でも、「もっとこうした方がいいんじゃないか」とみんなで話し合いながら作っていたり、一つ一つ、観てくださっている方にどう伝えていくかをすごく意識されているなと思います。自分の役だけじゃなく作品全体のことを考えて、みなさんが丁寧にお芝居されている感じがしますね。
――演じる宮元亜由美の6年間の変化について、監督とは何かお話しされましたか?
水谷:そこは特に描かれないので、お話はしていないです。でも、自分の中でどうなのかなと思ったときに、たとえば(葵)わかなちゃんが演じる美和は「新人から一人前の看護師さんになっている」というわかりやすい変化があるけれど、宮元は前回も新人というほどではなかったし、今もベテランというほどではないので、中堅ならではの悩みもあるんだろうなと。そこが本編で周知されることはないですけど、なんとなくそれを感じながらお芝居しています。
――サイドストーリー『ブラックペアンと言いたくて...~万年ヒラ医局員の憂鬱な日常~』では、本編以上に宮元にフィーチャーしていますね。
水谷:自分なりに考えていた裏設定だったり、自分が思う宮元のオフの顔にすごく近いことがわかって、「これで合ってたんだ」という気持ちになりました。そこをサイドストーリーで描いてくれたことがすごく嬉しかったですね。本編では患者さんに見せる“オンの顔”だけど、サイドストーリーでは“素の宮元”。その部分をちゃんと演じさせてもらえたことが、本編にもすごく活きていると思います。他のキャストの方に関しても、同じようにちょっと掘り下げてキャラクターが描かれているので、本編で会ったときにも感じ方が全然違うし、どっちの撮影にもいい相乗効果が生まれているなと思っています。
――裏設定があるとのことですが、水谷さんが思う宮元とは?
水谷:きっと言われたことはしっかりやるし、真面目でちゃんとできちゃうんですけど、その分、何かを我慢してストレスが溜まっていると思うので、家に帰ったらすぐにお酒を飲んでいそうだなって(笑)。サイドストーリーでは“プライベートと仕事の両立がうまくいかない”みたいな悩みも描かれていて、すごく共感できたし、より深く宮元を知れたような気がします。
――コメディ要素もある物語ですが、現場の雰囲気はいかがですか?
水谷:同じ『ブラックペアン』とは思えないくらい、本編とはまるで違います(笑)。とにかく今野(浩喜)さんが面白いので、笑いをこらえるのが大変です。どうしても「ブラックペアン」と言えなくて、「ブラ、ブラ、ブラ……オエッ」と吐きそうになっていたり、テイクを重ねるごとに面白さが増していくんですよ(笑)。最初は本編で描かれているオンの宮元を引きずっていたけど、台本もぶっ飛んでいるし、みんなも本編ではまったく見せないような一面を見せていて。私もだんだん本編とは違う宮元をさらけ出すことができるようになって、さらにこの役への愛着が湧きました。
――一方で、同じく現在放送中の『ウルトラマンアーク』(テレビ東京系)も、『ブラックペアン』とはまたまったく違う雰囲気なのではないでしょうか?
水谷:違いすぎて、「何が違う」というのが難しいくらいです(笑)。家族や友達に見せている自分とあまり変わらない、今までで一番、素でいられた現場だと思います。すごく楽しかったですね。
――ちなみに、素でいられた理由は?
水谷:最初にメイクさんが「撮影期間が半年もあるとだいたいみんな素が出てきちゃうから、初めから作らずにいっていいと思うよ」と言ってくださって、「たしかにそうだな」と思ったんです。半年も毎日のように顔を合わせる仲になるので、“居心地のいい自分”でいることがすごく大事だなと思ったので、最初の頃は「なるべく自分がラクな状態でいよう」と意識していました。『ブラックペアン』とはまったく違う現場ですけど、それぞれに違った楽しさがあるのも面白いなと思います。