『愛の不時着』好き若手ライターが『シュリ デジタルリマスター』を観た 幻の傑作に大興奮

若手ライターが幻の傑作『シュリ』を観てみた

 一方で、ユ・ジュンウォンと婚約者イ・ミョンヒョン(キム・ユンジン)との時間はオアシスのようなもの。2人の会話は穏やかだが甘く、愛し合っていることがわかる。イ・バンヒにも恋人がいる。厳しい訓練に耐え、暗殺者にまでなったイ・バンヒの正体を彼は知らないが、それはただ単純にイ・バンヒという人間そのものを愛してくれているという証拠だ。“本当の愛”がそこにはあるのに、“国同士が敵対しあっている”という2人には、どうしようもない現実が大きな障壁になっている。それだけに愛の切なさは加速する。

 もっと紹介したい場面がたくさんある。唯一無二の相棒だったはずなのに、少しずつお互いを信じられなくなるユ・ジュンウォンとイ・ジャンギルの悲しさ、それほどまでに追い詰められた後にやってくる衝撃の結末とイ・バンヒの正体が明かされる瞬間。さらにサッカーの南北交流試合が行われる巨大スタジアムに爆弾が仕掛けられたことを知り、大惨事を防ごうと血まみれ&汗まみれになりながら奔走する、クライマックスシーンでのユ・ジュンウォンのカッコよさとギリギリすぎる展開のドキドキハラハラ感。そしてラストでユ・ジュンウォンとイ・バンヒそれぞれが下した“究極”の選択。“南北を跨いだ愛”の終着点を見届けるまで、何度も何度も「どうにか2人が幸せになる道はないのか」と思い、涙が止まらなかった。

 これまで観てきた韓国ドラマの、ドラマチック要素のほぼ全てが詰まっていたと言っても過言ではなかった本作。やっとポスターにある「韓流の原点にして頂点」という言葉の意味をしっかり理解できた気がする。と同時に、今なら『シュリ』を観るように勧めてくれた人たちの気持ちがわかる。単純に“傑作”というだけでなく、自分の中で噛み締めたいシーンのみならず、多くの人と語り合いたくなるようなシーンがたくさんあるのだ。

 筆者のように『シュリ』をまだ観たことのない人たちも多いことだろう。また、公開当初、観たことがある人も、20年以上経った今観るからこそ生まれる思いもあるはず。映画館で観られる今この機会を逃さず、是非ご覧いただきたいと声を大にして言いたい。

■公開情報
『シュリ デジタルリマスター』
9月13日(金)シネマート新宿ほかにて全国ロードショー
出演:ハン・ソッキュ、キム・ユンジン、チェ・ミンシク、ソン・ガンホ
監督・脚本:カン・ジェギュ
主題歌:When I Dream(キャロル・キッド)
配給:ギャガ
1999年/韓国/カラー/125分/ドルビー・デジタル/字幕翻訳:根本理恵
©Samsung Entertainment
公式サイト:gaga.ne.jp/shuri4K/
公式X(旧Twitter):@shuri_4k

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