入山法子、『虎に翼』で戦後日本の“叫び”を体現 「原爆裁判」で担う転換点としての役割

入山法子、『虎に翼』で体現した“叫び”

 放送中の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)では現在、いくつものストーリーが同時に進行している。ヒロイン・猪爪寅子(伊藤沙莉)と関わる人々の人生が等しく描かれ、そしてこれらが複雑に絡み合っているのだ。

 そんなところへ、新たなキャラクターが登場する。吉田ミキという女性だ。演じるのは入山法子である。

 “いくつものストーリーが同時に進行している”と先述したが、これは本作だけに見られるものではないし、これまでにも本作はそのようにしてドラマを展開させてきた。『虎に翼』の主人公=ヒロインは紛れもなく寅子だが、彼女が日々を活き活きと過ごしているように、誰もが等しく自分の「人生」を歩んでいる。

 第23週「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」では、寅子の弟・直明(三山凌輝)とその妻である玲美(菊池和澄)の間に子どもが産まれ、寅子は娘の優未(毎田暖乃)とともにパートナーの星航一(岡田将生)の家族たちと“新しい家族のかたち”を築いていたところだったが、航一の母・百合(余貴美子)の認知症が進み、とても心配である。これは寅子の身内らの話だ。

 いっぽう、裁判官としての寅子は、世間の注目が集まる「原爆裁判」に臨んでいるところ。そんな中、彼女が弁護士時代にお世話になった弁護士の雲野六郎(塚地武雅)が亡くなってしまう。ここで登場するのが、入山が演じる吉田ミキである。この裁判の原告こそが彼女だという。

 第112話では、弁護士の山田よね(土居志央梨)が「原告はいまを生きる被爆者」と口にしていた。第23週の予告に入山はほんの一瞬ほどしか映っていなかったが、彼女が演じる吉田ミキとは、つまり被爆者ということなのだろう。

 ヒロインの寅子と同じように、“誰もが等しく自分の「人生」を歩んでいる”と記したが、これはやはり語弊がある。そうだ、人生は平等ではない。げんに寅子の夫である優三(仲野太賀)は、妻子を残して戦死してしまった。あんなに心の優しい人が。

 そうして当たり前の「人生」を奪われた人が、あの当時にはごまんといた。劇中で描かれているいまの時代は昭和34年ーーつまりは終戦から十数年の時を経てもなお、「人生」を奪われ続けている人がいる。そのうちのひとりが吉田ミキなのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる