“恐ろしい存在”を演じさせたら韓国一 善も悪も表現できるファン・ジョンミンの“強さ”
『ソウルの春』でも、チョン・ウソンの前にファン・ジョンミンは立ちはだかる。今度は、反逆者の暴走を食い止めたい高潔な軍人イ・テシン(チョン・ウソン)の前に現われた、新たな独裁者を狙うチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)として。
2作品においてのチョン・ウソンとファン・ジョンミンの関係性は、構図としては似ているのだが、この映画でファン・ジョンミンに驚かされたのは、その体格の小ささである。『アシュラ』の市長・ソンベのときは、チョン・ウソンと同じくらいの体格で、大きな存在として見えていたのに、『ソウルの春』のときは、チョン・ウソンよりも一回りも二回りも小さく見えた。
実際にはチョン・ウソンは188センチ、ファン・ジョンミンは182センチと言われているが、その役の演じ方によって、ここまで印象を変えるのかと思わされた。もちろん、撮影の技術にもよるのだろうが、姿勢や動きなどからも、体格の違いが見えたし(実際のモデルもいる作品だけに、近づけたということもあるのだろうこともわかっている)、その存在感の違いによって、醸し出す「怖さ」にも違いが見えるようで興味深かった。
悪に繋がる「怖い」ファン・ジョンミンのことばかり書いてしまったが、Netflixで配信中の『クロス・ミッション』で演じた現在は主夫で、実は元情報司令部の特殊要員であったパク・ガンムのような、善良な市民としての「強さ」を体現できる人でもある。
特に『生き残るための3つの取引』でもタッグを組んだリュ・スンワン監督の『ベテラン』(2015年)では、ファン・ジョンミンの善良な強さが大いに引き出されていた。この映画で彼は、財閥企業に苦しめられたトラック運転手の事件を追う刑事ソ・ドチョルを演じた。手荒なことはするが、弱きものを助け、強い悪を許さないという勧善懲悪なキャラクターは、ド直球であるが、今こそ必要なヒーローであると思えた。続編が韓国で9月に公開される予定である。
善の強さを体現できるのは、先ごろ『密輸 1970』をヒットさせたリュ・スンワン監督の社会を見つめる目や、そこから生まれるぶれない倫理観と、ファン・ジョンミンのキャラクターが合致したところもあるのだろう。このコンビでこれからも『ベテラン』のシリーズを存続してほしい気持ちもあるし、早く日本でも観られる日が来ないのか、待ち遠しい日々を過ごしている。
■公開情報
『ソウルの春』
新宿バルト9ほか全国公開中
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、チョン・マンシク、チョン・ヘイン、イ・ジュニョク
監督:キム・ソンス
脚本:ホン・ウォンチャン、イ・ヨンジュン、キム・ソンス
配給:クロックワークス
2023年/韓国/韓国語/142分/シネマスコープ/5.1ch/字幕翻訳:福留友子/字幕監修:秋月望/英題:12.12: The Day/G
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