アニメ『逃げ上手の若君』の効果的な“ゴア描写” 狂気を滲ませた東地宏樹の名演が光る
第八回だけに限らず、『逃げ上手の若君』ではこれまでも多くのゴア描写が象徴的に描かれてきた。第一回では鎌倉幕府を滅亡させた張本人である足利尊氏が致命傷を受けていた幕府の武士に追い打ちをかけるかのように、喉元に弓矢を放つ。ポップなタイトルに惹かれて見た視聴者はきっと悲鳴を上げていたに違いない。第六回では征夷大将軍の護良親王と対峙した尊氏が、一瞬にして護良親王の部下たちの首を落とし、滝のように血が降り注ぎ、不敵な笑みを見せる。横一列に並んだ人間の首が一瞬にして切り落とされるというかなりショッキングなシーンだった。スローモーションで徹底的に尊氏を映し続け、人間の死をあくまでも背景として描くことでさらに恐怖を助長していた。『逃げ上手の若君』はポップなシーンとグロテスクな描写のバランスが適度なのが良い。
吹雪の作戦で瘴奸を時行が待つ部屋に誘導することに成功した。吹雪に教えられた構えをする時行に、瘴奸が「無駄無駄」と斬りかかるシーンでは、漫画的な線も多用しつつ、かなり迫力のあるものに。殺しに生きがいを感じている瘴奸に、実は武士的な相手を重んじる姿勢も持ち合わせているのが意外ではあったが、やはり殺しに快楽を感じている点では危険な人物だ。狂気的な一面を表現する東地宏樹の声も素晴らしく、まさに名演だった。
さて、吹雪が時行に教えていた左手を拝むポーズの狙いは何なのだろうか。時行に勝てるチャンスがあるのであれば、それは変化球しかない。これまで幾度もピンチをくぐり抜けてきた時行であれば、ピンチを乗り越えられるはずだ。
■放送情報
『逃げ上手の若君』
TOKYO MX、BS11ほかにて、毎週土曜23:30〜放送
キャスト:結川あさき、矢野妃菜喜、日野まり、鈴代紗弓、悠木碧、戸谷菊之介、中村悠一、小西克幸
原作:松井優征(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:山﨑雄太
シリーズ構成:冨田頼子
キャラクターデザイン・総作画監督:西谷泰史
副監督:川上雄介
プロップデザイン:よごいぬ
サブキャラクターデザイン:高橋沙妃
色彩設計:中島和子
美術監督:小島あゆみ
美術設定:taracod/takao
建築考証:鴎利一
タイポグラフィ:濱祐斗
特殊効果:入佐芽詠美
撮影監督:佐久間悠也
CGディレクター:有沢包三/宮地克明
編集:平木大輔
音響監督:藤田亜紀子
音楽:GEMBI/立山秋航
音響効果:三井友和
制作:CloverWorks
©松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会
公式サイト:https://nigewaka.run/
公式X(旧Twitter):@nigewaka_anime