舞台『千と千尋の神隠し』ロンドン現地での評価は? 4カ月にわたる公演が大千穐楽へ

舞台『千と千尋の神隠し』ロンドン公演レポ

 宮﨑駿監督によるスタジオジブリ制作のアニメーション映画をもとにした舞台『千と千尋の神隠し』。初演は上白石萌音と橋本環奈がヒロイン・千尋役を務めて話題となり、2023年に行われた名古屋での再演を経て、2024年春から再びスタートした公演『千と千尋の神隠しSpirited Away』には、上白石と橋本に加え、千尋役に川栄李奈と福地桃子を新たに迎えた。4月30日には初の海外公演となったイギリスのロンドン・コロシアムでプレビュー上演がスタート。およそ4カ月に渡って続いた公演が8月25日に大千穐楽を迎え、当日はHuluにて独占ライブ配信も行われる。

撮影:Johan Persson

 久石譲がオリジナルスコアを手がけ、現地のオーケストラメンバーも加わったチームが奏でる音楽、劇場の形や環境に合わせて構成されたキャストたちのパフォーマンス……観劇が日常化しているイギリス・ロンドンの現地の人々は、日本のエンタメをどう感じたのか。現地メディアでは、5つ星による評価と合わせて、たくさんのレビューが公開されている。

 『Express.co.uk』は、「唯一批判するとすれば、舞台横の英語字幕を読む必要があり、そのせいで目の前の幻想的な光景に集中しづらいこと。それでも、ジブリファンや、何か新しく引き込まれる作品を観たい劇場ファンにとっては見逃せない」と5つ星評価。(※1)『The Independent』も同じく5つ星評価を与え、「もし舞台化するとしたら、これ以上のものは考えられない」と絶賛。(※2)そのほか、「音楽が本作の最大の魅力のひとつ」と評し4つ星評価を与えている『The Guardian』のほか(※3)、『London Theatre』では4つ星(※4)、『Time Out London』では3つ星(※5)と、『千と千尋の神隠しSpirited Away』は軒並み高評価を得ている。

撮影:Johan Persson

 第77回カンヌ国際映画祭にて、映画界への多大な貢献をたたえる「名誉パルムドール」を受賞したことも記憶に新しいスタジオジブリ。第96回アカデミー賞でも宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』が長編アニメ映画賞に輝いた。スタジオジブリ作品は、日本とアメリカを除き、Netflixにて世界各国で配信されている。公開から長い時間が経過している作品が多い現在でもなお、スタジオジブリの映画に魅了されている人が国内外で大勢いる。原作の認知度が高いことは、観劇の入り口を広げる大きなポイントではあるが、一方で原作と比較されやすく、観劇の期待値が上がってしまうことも考えられる。また、『千と千尋の神隠しSpirited Away』と同じく、『となりのトトロ』を舞台化しロンドンで上演された『My Neighbour Totoro』は、2022年にローレンス・オリヴィエ賞で6部門を受賞。2025年3月から無期限ロングラン上演も決定するなど、高評価を得ている。筆者が『千と千尋の神隠しSpirited Away』の感想を聞いた観客たちは、声を揃えて『My Neighbour Totoro』が素晴らしかったと述べており、今回の公演へ足を運ぶきっかけにつながっている印象だった。

撮影:Johan Persson

 本公演は劇場でのアナウンスやキャストのセリフも全て日本語で行われ、ステージの左右と上に英語字幕が流れる。複数のレビューで記されていたように、ステージで繰り広げられる舞台芸術を受け止めるだけでも精一杯なのに、字幕を追いながら観るのは非常に困難なこと。そんな中、舞台装置、美術とともに視覚で観客の心を惹きつけるのが、キャストたちの衣装と登場するパペットだった。本作でスタイリスト・衣装デザイナーを務める中原幸子は、演じるキャストのイメージに合わせて素材を選び、衣装を設計する。日本とロンドンの照明が異なっていることから、色や素材、デザインを調整したことを明かしている。

 そしてパペットデザインのトビー・オリエは、映画のキャラクターたちをパペットで精巧に再現。舞台上でリアルに息をするキャラクターたちの姿を見ることができた。

 
 
 
 
 
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