『虎に翼』は“原爆裁判”をどう描く? 寅子のモデル=三淵嘉子の史実から考える

『虎に翼』は“原爆裁判”をどう描く?

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』第98話では、東京地裁・民事第二十四部に配属された寅子(伊藤沙莉)が、同僚の漆間(井上拓哉)と汐見(平埜生成)とともに「原爆裁判」の訴状を読み合う場面が描かれた。

 寅子の父・直言(岡部たかし)が関わったとされた「共亜事件」とその裁判は、モデルと思われる事件はあったものの実際には起こっていないものだった。しかし、今回寅子が関わる「原爆裁判」は実際に起こされた裁判の通称である。1955年(昭和30年)に、国を相手に損害賠償とアメリカの原爆投下を国際法違反とすることを求めて訴訟が提起された。そして、寅子のモデルとなった三淵嘉子は実際にこの裁判に参加している。

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 国家間には、日本国内の法律のように、その関係を規律する国際法と言われるものがある。そして国際法では、“戦争のルール”が決められている。第二次世界大戦当時の戦時国際法としては「ハーグ陸戦条約」が採択されており、日本も調印国として名を連ねていた。その「ハーグ陸戦条約」では、簡単にいうと、「毒または毒を施した兵器」や「不必要な苦痛を与える兵器」の使用を禁止していた。また、民間人や武器を持って戦っていない人を戦闘行為に巻き込んではならなかった。広島や長崎への原子爆弾の投下は、この“ルール”違反にあたるのではないかというのが「原爆裁判」の訴えである。

 余談にはなるが、もちろん当時の国際法でも、今の国際法でも戦争を肯定しているわけではない。国によっては軍人や戦闘員が職業になっていて、何かあれば最前線に行かなければならない人たちがいる。その場を無法地帯にしないためにも“ルール”を決める必要があるのだ。だが、戦争によって奪われていい命など一切存在しないことはここに明記しておきたい。

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