『虎に翼』伊藤沙莉×毎田暖乃、意味が異なる「はて?」 新キャスト登場で第20週が幕開け

『虎に翼』新キャスト登場で第20週が幕開け

 寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)はお互いに納得する認識を見つけ、穏やかに永遠を誓わない愛を育み続けた。そして昭和30年、東京に戻ることになった寅子は杉田(高橋克実)らに盛大に見送られる。NHK連続テレビ小説『虎に翼』が第20週初日を迎え、成長した優未(毎田暖乃)や花江(森田望智)の長男・直人(青山凌大)、次男・直治(今井悠貴)が登場した。成長した彼らの言動に、寅子や寅子の兄・直道(上川周作)の姿が重なり、印象的だった。

 物語冒頭では、寅子と航一、そして竹澤咲子が演じる優未が海辺ではしゃいでいた。関係性が深まった3人の姿は微笑ましい。新潟での日々は寅子と優未の間にあった溝を埋め、また、自責の念に駆られて心に蓋をして生きてきた航一に変化をもたらしたのだと実感できる美しい場面でもあった。その後、毎田演じる小学6年生となった優未が登場する。毎田の佇まいには竹澤と同じく、心優しく、しっかり者の印象を抱く。

 そんな成長した優未の口から「はて?」という言葉が飛び出した。優未の「はて?」は、寅子の「はて?」と違い、世の不条理に向けられたものではない。優未は航一の「家族を紹介したいので」という言葉と、それに対する寅子の反応に困惑する航一の姿から、航一の意図を察して「はて?」と呟いたようだった。寅子と航一を気にかけるような視線を向ける毎田の演技が、第94話で涼子(桜井ユキ)が航一に助言した寅子の特徴、「恋愛ごとの機微には無頓着」な部分をより際立たせる。航一の言葉に「あらっ、うれしい! 私も家族を紹介したいわ」とカラッとした笑顔を見せていた寅子の変わらなさは物語の上では魅力的だと思うが、優未や航一、そして視聴者はじれったさを覚えたことだろう。優未の「はて?」は、自分自身の航一への感情が捉えきれない寅子に気づきを与えるものになるのかもしれない。

 それから、直治の言動に直道の姿が重なる場面も心に強く印象を残した。直治は東京に帰ってきた寅子と優未を花江たちがあたたかく出迎える。ジャズに夢中な高校生の直治は、中古で購入したサックスを四六時中練習しているようだ。寅子と優未を囲んだ食卓では見事な演奏を披露する。花江はそんな直治に呆れ気味だが、寅子は「いいのよ。好きなことを見つけるのはいいことだわ」と肯定する。すると、直治は自信満々な表情でこう言った。

「俺には分かってたよ。トラちゃんなら俺を分かってくれるって」

 その声色も表情も直道そっくりだった。直道の口癖である「俺には分かる」は、第41話で兄・直人にも引き継がれていたが、成長した直治の人物像はますます直道に似ており、驚かされる。直道は花江たち家族の中で生き続けているのだと改めて感じた。

 ふたたびの東京編の序盤は、航一の家族との対面や花江と直明(三山凌輝)のケンカが物語の主軸となりそうだ。新潟編とはまた違ったはらはらする展開が続きそうだが、成長した子どもたちの言動が心を和ませてくれることだろう。

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