NHKドラマで描かれてきた“オリンピック” 『虎に翼』で人種差別のテーマを扱う意義とは
放送中の『虎に翼』は現在、戦後から10年が経った1950年代後半が舞台となっている。東京オリンピックが開催されるのはさらに10年ほど先で、そのとき、寅子(伊藤沙莉)がどこで何をしているかはまだわからない。でもオリンピック直前で日本中が沸き立った雰囲気だったとしても寅子は、何かに頭を悩ませ、唸りながら仕事に邁進しているような気がしてならない。
奇しくも『虎に翼』第18週では、テーマのひとつとして人種差別が描かれた。“平等”を考える寅子に、弁護士の杉田(高橋克実)は「平等やらなんやらに気を使えるのは、学があるか余裕がある人間だけら」と言った。きっと戦争を経験し、目の前にいるのが“どこの国の人間か”によっていろいろな思いがこみあげてくるのだろう。一方、寅子の同僚・入倉(岡部ひろき)は、「俺は普通でいるのに敵扱いされて睨まれる」「頭じゃダメだってわかってても、彼らの印象だって悪くなる」と朝鮮人に厳しかった理由のひとつが“怯え”だったことを明かした。それでも、戦争を経験しているはずの入倉が「昔のことなんて知らない」と断言したことに彼の強さと希望を感じた。
パリオリンピックを観ていると、世界の広さを感じるとともにさまざまな人種や境遇の人たちを目にする。中には、国同士が敵対している、もしくは敵対していた歴史を持つところもある。だからこそ、入倉のように「昔のことなんて知らない」と言う勇気を持ち、“平等”と“平和”のために多くの国の人と、ひとりの人間として付き合えるようになりたいと思うのである。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、戸塚純貴、岩田剛典、田中真弓、羽瀬川なぎ、田口浩正、遠山俊也、望月歩、堺小春、田中美央、竹澤咲子、名村辰、松川尚瑠輝、岡部ひろき、高橋克実
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK