『虎に翼』岡田将生が口にした“総力戦研究所”での過去 音と光の演出が秀逸だった第18週
航一(岡田将生)が、戦争で娘と孫を亡くした杉田(高橋克実)を抱きしめて言った「ごめんなさい」。その言葉の真意が『虎に翼』(NHK総合)第90話で明らかになった。
航一は意を決したように、重い口を開く。彼は戦時中、総力戦研究所という機関にいた。内閣総理大臣直轄の研究所で、総力戦の本質を明らかにするのを目的とし、航一は研究生として日米戦争を想定した総力戦の机上演習を行っていた。
机上演習の結果は、日本の敗北。資源の自給率の低さなど、様々な理由から「日本必敗」という予測が立てられた。航一たちは、日米開戦は避けるべきだと模擬内閣として提言するも、「演習の結果は政府の方針とは何らの関係もない」と上層部は耳を貸さず、予測通りに日本は敗戦。杉田の娘や孫、寅子(伊藤沙莉)の兄・直道(上川周作)、優三(仲野太賀)ら、多くの命が犠牲になった。杉田や寅子は大切な人を失った当事者だ。航一は戦争を止められなかった責任を感じて、ずっと後悔に苛まれている。
「その罪を僕は誰からも裁かれることなく生きている。僕はそんな自分という人間を信じていない。そんな人間が何かを変えられるとは思わない。だから、謝るしかできないんです」と吐露する航一に絶句する寅子たち。自分自身は信じられなくても法律は信じられると、全てのものとの距離を置き裁判官としての務めを果たしてきたつもりだったが、こうして口外厳禁なはずだった機関でのことを話してしまっている。話せている。航一にとって寅子や杉田たちが、この人たちにならと思える拠り所のような存在に少しずつなってきているのかもしれない。閉ざしていた心の蓋を思わず開けてしまうような。
杉田の「あなたは十分苦しんだ」「謝らなくていい」という慰めの言葉に、航一は頭を冷やしてくると喫茶「ライトハウス」の外へ。粉雪が舞う中、後を追ってきた寅子は、航一が抱えている後悔を分けてくれないかと話す。「あなたが抱えているものは、私たち誰しもに何かしらの責任があることだから。だから、バカの一つ覚えですけど、寄り添って一緒にもがきたい。少しでも楽になるなら」という寅子の言葉に、航一は手で口を覆いしゃがみこむ。隣にしゃがんだ寅子は、震える航一の背中に手を当て優しくさすり続けた。