『虎に翼』新潟への異動で寅子は変わるか? 環境が朝ドラヒロインにもたらす影響

『虎に翼』環境変化で寅子は大きく変わる?

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』で、家庭裁判所の判事補である寅子(伊藤沙莉)は、新潟地家裁三条支部に異動することに。異動すると同時に、判事補から判事へと出世することが約束されているが、東京生まれの東京育ちで、これまでずっと東京勤めだった寅子が、遠方の新潟県に引っ越し、新たな場所で働くことで、彼女にどのような変化が待ち受けるのだろうか。

 近年の朝ドラでも、主人公たちが主に地方から東京に移り住み、新しい仕事に就く模様が描かれてきた。今回の『虎に翼』では、寅子はその逆となるが、これまでどのような環境の変化が主人公たちに訪れてきたのか振り返ってみたい。

 『半分、青い。』(2018年度前期)のヒロイン・鈴愛(永野芽郁)は、岐阜県で生まれ育ち、高校卒業後に漫画家・秋風羽織(豊川悦司)に弟子入りする形で上京。漫画家への道を歩み始めるが、スピード結婚して出産後、離婚して岐阜に戻る。カフェを開業した後、また上京した鈴愛は、アイデア商品を開発・発売する会社を起業。目まぐるしい半生を送る鈴愛は、環境によって心境が変化するというより、勢いで動くタイプで、どこにいても、その時に思いついたことに夢中になるという、異色のヒロインだった。

 『なつぞら』(2019年度前期)のヒロイン・なつ(広瀬すず)は、東京で生まれて戦災孤児となり、亡父の戦友に引き取られて北海道の牧場で育つ。牧場を継ぐことも考えたが、悩んだ末に上京してアニメーターを目指すことに。東京で靴磨きをして小銭を稼いでいたなつが、雄大な北海道でのびのびと成長した後、再び東京に戻って、アニメーション制作現場で働くという夢を実現しようと邁進する様子からは、彼女の内面の変化がよく伝わってきた。

 生きていくために必死だった子ども時代から、北海道で家族として迎えられ、温かい愛情を知り、上京して自分自身の夢と幸せをつかもうとする余裕を持てるようになるまで、『なつぞら』では環境ごとに何度も主人公の内面の変化が描かれた。

 『エール』(2020年度前期)の主人公・古山裕一(窪田正孝)は、福島県で呉服店を営む家族のもとに生まれ、跡取りとして育つが、蓄音機で聞いた音楽に心を奪われ、音楽家の道を志す。関内音(二階堂ふみ)と文通をきっかけに交際し、結婚を決意した裕一は、上京して音と新生活をスタート。音の後押しで、レコード会社と契約し、作曲家デビューを果たす。子どもの頃から気が弱く、あまり積極的ではなかった裕一だが、音と恋に落ちたことで人生が劇的に動き出した。

 裕一の場合、福島から東京に引っ越したことに加え、音との結婚によって内面が大きく変化し、それが作用して偉大な作曲家へと出世していった。魂の伴侶との出会いが心境の変化をもたらした朝ドラとなった。

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 『おかえりモネ』(2021年度前期)のヒロイン・百音(清原果耶)は、宮城県気仙沼市の離島で育つ。震災で心に傷を負った百音は、島を出たい一心で登米市の山林地域の森林組合に就職。そこでは、夢や目標を持てずに悩む百音だったが、気象予報士の朝岡覚(西島秀俊)と出会い、彼が天気を予測し的中させる様子に感動した百音は、上京して気象予報士として活躍することを目指す。

 海に囲まれた離島から早く出ていきたいと考えていた頃と、山林地域での生活時、そして東京で夢を叶えるために始めた新生活の日々。引っ越す度に、どんどん明るく前向きになっていった百音は、環境の変化と内面の変化が連動したことがはっきりと分かるヒロインだった。

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