森本慎太郎の“不器用さ”は匠の域に 『街並み照らすヤツら』は愚かさを肯定する人間讃歌
そして、自分の願望を通すために時に嘘をつき、知らないフリをする登場人物たちの心情を補完する冷静なナレーションも本作の大事な要素の一つ。本来、映像作品のナレーションは主人公の心情のみを説明していく場合が多いが、『街並み照らすヤツら』ではほとんど全員の心情がナレーションにより補完されていた。ナレーションによる客観的な目線があることで、人間の本音と建前が鮮やかにあぶり出され、登場人物たちの自分本意な振る舞いが際立つのだ。明るいキャラクターたちと会話劇、それを客観的に見守るナレーションが噛み合うことで、恐ろしいことをしているのに恐ろしく見えないという不思議な感覚を生み出していた。
欲望や嫉妬、プライド、見栄。そういった生きていくうえで逃れられない負の感情に振り回されている人間を描いてきた本作。愛らしく憎めない人物たちが紡いできたストーリーからは、人間のマイナスな側面をそのまま見せようという意図を感じる。人間の有りのままを肯定的に描いてきた内容は「人間讃歌」と呼んでもいいだろう。
そしてその中心にいる主人公・正義は、最も人のために行動していると信じている人物だ。逆に言えば、作中で一番自分の信じるものの危うさに気づいていない。そんな役を真摯な表情と台詞回しが特徴の森本慎太郎が演じたことで、作品のテーマがより分かりやすくなっていた。『だが、情熱はある』(日本テレビ系)で、不器用に自分と向き合う山里役で高い評価を受けた彼だからこそ、任された役と言えるだろう。
ドラマは人物が気づきを得て変化し、成長していくのがセオリーだ。だが、これだけ未熟で自分勝手な人間たちを描いてきた作品だからこそ、最後までそれぞれが好きなように生きて、愚かなままでいてほしいと願ってしまう。
■放送情報
土ドラ10『街並み照らすヤツら』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演 : 森本慎太郎(SixTONES)、月島琉衣、浜野謙太、吉川愛、曽田陵介、萩原護、宇野祥平、皆川猿時、森川葵、船越英一郎
脚本:高田亮、清水匡
音楽:大野宏明
監督:前田弘二、鯨岡弘識、中里洋一
プロデューサー:藤森真実、榊原真由子、宇田川寧、妙円園洋輝
チーフプロデューサー:田中宏史
制作協力:ダブ
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
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