令和版『花咲舞』主演が杏ではなく今田美桜である意義 “芯の強さ”は確固たる持ち味に

令和版『花咲舞』が今田美桜である意義とは

 また逆に、昇仙峡(菊地凛子)のやんごとなき背景を知らずに、一方的に物申すことも多々あり、人としての厚みがまだまだ足りないと思わせる演出にもつながった。その分、舞のバディである相馬、叔父の花咲健(上川隆也)、芝崎次長(飯尾和樹)という、舞を見守る“おじさん三銃士”の存在が生きてくる。

 そして第9話では、東東デンキの粉飾決算について、報告書を提出するも隠蔽され、情報をリークした早瀬(朝倉あき)が退職、相馬は異動が決まり事実上の左遷となってしまう。舞は責任感を感じ、仏壇の前でどっと落ち込む。これまで信じてきた“真っ直ぐな正義”が結果的に人に迷惑をかけた形となり心が折れ、「私は正しさを押し付けてたんです。独りよがりでした」と弱音を吐く舞を、相馬は必死に激励する。それを受けて花咲は、「お言葉を返すようですが」と舞が相馬には弱い自分を見せないように強気で言い返し、「相馬さんが言ってくれたから、私は黙りません。今までありがとうございました」と真っ直ぐな目で感謝するように宣言する。今田の表情が、自信と覚悟、感謝、そして成長を感じさせ、これまでの“小娘感”のある演技と演出はこのシーンのための助走だったと思わせるほどであり、「令和版の花咲舞とは?」という問いへの答えであるような名シーンとなった。

 平成版とは好みが分かれるかもしれないが、今田に関しては、今作でもキッチリと芯の強い役を演じ、そこから見せる弱さ、そして周りの登場人物たちも光らせる役割を全うしていると改めて感じる。役者としてお仕事ドラマでのヒロインの成功は、30代に向けて確かなキャリアアップになったのは間違いないだろう。

■放送情報
土ドラ9『花咲舞が黙ってない』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
TVer、Huluにて、地上波放送後配信
出演:今田美桜、山本耕史、飯尾和樹(ずん)、要潤、菊地凛子、上川隆也ほか
原作:池井戸潤 『花咲舞が黙ってない』(中公文庫/講談社文庫)、『不祥事』(講談社文庫/実業之日本社文庫)
脚本:松田裕子、ひかわかよ
演出:南雲聖一
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:小田玲奈、鈴木香織、能勢荘志
シリーズプロデューサー:加藤正俊
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hanasakimai2024/
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