トム・クルーズ『M:I-2』は狂い果てた映画だ 特濃のアクション映画スープを全身で浴びろ!

『M:I-2』は狂い果てた映画だ

「トムが大丈夫と言ったから、大丈夫だと思います。たぶん」

 これは、崖からぶら下がっているトム・クルーズを見て、「あれって大丈夫なの?」と心配したトムの母親に、映画監督ジョン・ウーが語ったという言葉である。

 祝・3週連続『ミッション:インポッシブル』シリーズを『金曜ロードショー』で放送! というわけで、今回はシリーズ第2作の『M:I-2』(2000年)をご紹介したい。まず結論から言うと、『M:I-2』は狂い果てた映画だ。あらすじは、トム・クルーズが演じる超カッコいいスパイのイーサン・ハントが、なんかヤバくて悪いヤツらをブッ潰して世界を救う……このシンプル極まりないものである。複雑なプロットをまとめつつ、疑心暗鬼サスペンスの傑作に仕上げた前作から一転、本作は完全なアクション映画だ(スパイっぽさはシリーズ名物の偽顔面くらいではなかろうか?)。トムクルさんが「同じことを繰り返さない!」という高い志を持つがゆえに、こうなったのだろうが……どっこい、そこにはイケイケ時代に突撃していたトムクルさんと、脂の乗り切ったジョン・ウー監督がいた。普通のアクション映画になるはずもなく、結果、映画は2000年代の幕開けに相応しい、爆裂打ち上げ花火と化したのである。

 まず冒頭、とりあえず飛行機が墜落。続いて主役のトムクルさんが登場するわけだが、本筋とまったく関係なく命の危険に陥っている。休暇を満喫しているイーサン・ハントは、命綱なしの素手でロッククライミングをしていて、落下死まったなしの難所にガンガン挑んでいるのだった。現代にも繋がるトムクルさんの高い所に登りたがる傾向が、スクリーン上で爆裂した瞬間である(この撮影時に、冒頭のウーとトムクルさんの母の会話があったそうだ)。

 なんとか物語と関係ない命の危機を乗り越え、崖を登り終えたトムクルさんのところに、ヘリコプターがやってくる。そのヘリには絵に描いたようなスパイが乗っていて、いきなりミサイルランチャーをトムクルさんへ向けて発射。ミサイルは地面に突き刺さるが、爆発はしない。何事かと思ったら、トムクルさんは苦笑いを浮かべ、同時に抜群のタイミングで例のテーマが流れ出す。

 そしてトムクルさんが触ると、ミサイルがパカっと開いて、ウィーンと全自動でサングラスが出てくる(なんというハイテク感だろうか)。そのサングラスを着用すると、「おはよう、ハントくん」と挨拶が始まり、今回のミッションの説明が始まった。説明が終わると、上司は「休暇に行くときは、行き先を教えるように」と語り、トムクルさんは「行き先を教えたら、休暇にならないだろ?」とウィットなジョークと共にサングラスを放り投げる。そして画面に向かってくるサングラスが大爆発、ギターがギュインギュイン鳴りまくるBGMと共に、シリーズ最高にド派手なノリでタイトルがイン!

 ここまで10分である。現在の2000年代ファッションのリバイバルが裸足で逃げ出す、2000年代のリアルな空気感がパンパンに詰まった名シーンだ。ちなみに、このタイアップ曲を担当したのはLimp Bizkitで、他にもロック系を中心に豪華なメンツが集まったサントラは、日本で大ヒットした。この記事を読んでいる10代の読者の方は、お父さん・お母さんに聞いてみてほしい。けっこうな高確率でこの映画のサントラを買っているはずだ。

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