競馬歴40年が劇場版『ウマ娘』を観てみた “史実競馬”をモチーフにした物語を分析

競馬歴40年が劇場版『ウマ娘』を観てみた

 劇場版『ウマ娘』では、ジャングルポケットがアグネスタキオンの豪脚を認めつつも、次の対決でリベンジすることを誓った。続くレースは、ジャングルポケットがG3共同通信杯に向かい、アグネスタキオンが皐月賞のトライアルG2弥生賞に向かった。結果はともに1着となり本番の皐月賞へ。ここで、アグネスタキオンとジャングルポケットの2度目の直接対決が実現する。

 2001年4月15日、中山競馬場、天候晴れ。アグネスタキオン号は、単勝1.3倍と圧倒的な1番人気に支持され、対するジャングルポケット号は単勝3.7倍の2番人気――。

 劇場版『ウマ娘』では自信に満ちあふれたアグネスタキオンの様子と、勝ち気にはやるジャングルポケットの心の内が描き出された。

 ファンファーレに続き、ゲートが開くとジャングルポケットが出遅れ、後方に下がる。対するアグネスタキオンは抜群のスタートを切って、好位をキープする。レース中盤から徐々にポジションをあげるジャングルポケット、直線勝負に向けて脚をためるアグネスタキオン。

 追ってくるジャングルポケットを尻目に、アグネスタキオンがまたもや豪脚を繰り出す。どこまで行っても届かない、そんなイメージを残し、アグネスタキオン号はゴール板を1番で駆け抜けた。1着アグネスタキオン、2着ダンツフレーム、3着ジャングルポケット。

 実際のレースで言えば、競馬ファンが一斉に声を上げた瞬間である。誰もが「今年の三冠馬はアグネスタキオン号だ」と……。競馬ファンは、自分の馬券が当たることも嬉しいが、強い馬を見てみたい。大谷翔平選手のように海外のレース(たとえば凱旋門賞)で、世界の一流馬を負かすシーンを見てみたい。そんな願望もある。

 劇場版『ウマ娘』では、ゴール後のジャングルポケットが、アグネスタキオンの圧倒的な強さに打ちひしがれ、気力を失う様子が描かれている。

 しかし……! 先にも触れたようにアグネスタキオンは突如無期限の出場停止を表明する。そして、ジャングルポケットは、永遠のライバル(目標)を失った。その後、ジャングルポケットは、アグネスタキオンを追い求めるかのように走り続ける。そして、次戦の日本ダービーを制した。

 実際のレースは、中段で脚を溜めたジャングルポケット号が、直線で外を通り残り2ハロン(約400m)の標識を過ぎると一気に加速しトップに躍り出た(1着ジャングルポケット号、2着ダンツフレーム号)。皐月賞時の順位が入れ替わった。ジャングルポケットがターフ( 芝のコース)で輝いた瞬間だ。

 この後、ジャングルポケット号は菊花賞で負けるも、古馬の王者テイエムオペラオー号を相手にジャパンカップを制して、名実ともにナンバーワンホース(JRA年度代表馬)となった。競馬に「無事これ名馬」という言葉もあるが、ジャングルポケットは翌年も走り続け、12月に行われた有馬記念後に引退した。

 競馬に「たら・れば」はないが、もしもダービーにアグネスタキオン号が出ていたら……。その答えは永遠に見つからない。

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