『キャプ翼』『スラダン』に並ぶ影響力? 3つの視点と数字で見る『ハイキュー!!』の凄さ

3つの視点と数字で見る『ハイキュー!!』

 新作映画『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が興行収入100億円を突破した、アニメ『ハイキュー!!』。同作は、2012年から2020年まで『週刊少年ジャンプ』で連載された同名バレーボールマンガをアニメ化したもの。小柄だが人並み外れたジャンプ力を持つ日向翔陽と天才セッターの影山飛雄が宮城県にある烏野高校排球部でチームメイトとなったところから物語がスタートする。

 と言っても、マンガ、アニメ共に大ヒットした作品だけに、多くの人が『ハイキュー!!』がどんな物語であり、いかに素晴らしいかをご存知だろう。しかし筆者の周囲にいるマンガ/アニメファンでも、意外と触れていない人がおもに40代以上に散見される。今回はそんな未読/未見の人に向けて、『ハイキュー!!』の魅力とヒットの要因を3つの数字とともに紹介する。

スポーツ好きに強く訴える熱さ

 『ハイキュー!!』に関する数字で、特に印象的なのが2022年8月に放送されたバラエティ番組『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)による「スポーツの名門大学の運動部1384人を対象にした好きなスポーツマンガ」のアンケート。そのランキングで、3位の『MAJOR』や2位の『SLAM DUNK』を抑えて1位に輝いたのが『ハイキュー!!』だった。

 同作には天才的なキャラクターも登場するが、とんでもない必殺技などは登場せず、あくまで現実でもあり得るプレーに留まっている(主人公コンビによる「変人速攻」はやや現実離れしているが、これもYouTubeで実践動画が見られる)。それでも思わず息を呑むような迫力の試合シーンを生み出す“マンガ”の上手さこそが個人的には『ハイキュー!!』最大の魅力だと感じるが、日向をはじめ多くのキャラクターの努力や克己の様子が丹念に描かれることも、スポーツマンの共感を呼んでいる。このスポーツに真摯な作風も、作者の古舘春一が中学・高校の部活動でバレーボールに励んでいたためだろう。

 『ハイキュー!!』人気はほかでも感じることができる。この10年ほど高校の部活動においては少子化の影響が大きく、多くの競技で全国高等学校体育連盟への登録数が減少している。そんななか男子バレーボール部は微増しているのだ(2013年度:2750校→2023年:2756校)。もちろん『ハイキュー!!』だけでなく、近年の日本代表を中心とした男子バレーボール人気の影響もあるだろうが、同じ『週刊少年ジャンプ』連載作である『キャプテン翼』『SLAM DUNK』と同様に、ムーブメントの一翼を担っていることは間違いない。

王道ながら効果的だったメディア展開

 次に確認したいのが、特定のキーワードの需要をチェックできるGoogleトレンドだ。連載開始時から現在まで「ハイキュー!!」というワードは以下のように推移しており、いくつかの波があることがわかる。

 2014年4月にTVアニメ第1期の放送が始まって大きく盛り上がると、2016年前後は“ハイパープロジェクション演劇”として舞台版をスタート。どちらも定期的に展開し続けて話題に事欠かず、2020年7月の連載終了時に合わせてまた大きな山場を迎えている。

ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」‶東京の陣″ダイジェスト映像

 アニメ化や舞台化は今やメディア展開の定番ではあるが、『ハイキュー!!』に関してはそれぞれクオリティが図抜けて高かったのが特徴。特にアニメ版は同じ『週刊少年ジャンプ』発のスポーツマンガである『黒子のバスケ』で好評を博していたProduction I.Gが制作を担当し、従来の作品ファンだけでなくアニメファンも巻き込んで一気に作品の知名度を押し上げたのは、Googleトレンドが示すとおりだ。

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