『多聞くん今どっち!?』はアイドルアニメの到達点に 音楽ライターが魅力を徹底解説!

今や“推し活”は生活の一部となった。推しのために働くことは当たり前で、生活のリズムすら推しを中心に回っていく。音楽をサブスクで聴く時代になっても、握手会やリリースイベントのためにCDを積む(大量に買って壁の一角がCDになるくらい積みあげる)という光景は珍しくない。CDというパッケージが売れる日本は稀有な国だと言われようとも、CDの大量買いは止まらないのだ。

そんな“推し”という存在に、ある日突然出会ってしまった強火オタクとアイドルのドタバタな日常を胸キュンと共に紡ぐTVアニメ『多聞くん今どっち⁉』がとにかくヤバい! 観ていて思わず「ふはっ♡」と変な声が漏れる人が続出するだろう本作を全力でオススメしたい。
“強火オタク”木下うたげちゃんの解像度の高さ

主人公は、アイドルグループ・F/ACEのセンターでメンバーカラー(以下、メンカラ)が赤でセクシー&ワイルド担当の多聞くん(CV:波多野翔)を推す女子高生のうたげちゃん(CV:早見沙織)。彼女の部屋はもちろん推しのカラーで統一されており、アクスタにぬいぐるみ、ブロマイド、トレカと整然と並べた神棚に日々癒される強火のオタクだ。第1話の冒頭からF/ACEのドームライブの当落を、緊張の面持ちで確認する彼女の姿に、「あの瞬間って指が震えるよね……!」と、自分の経験を重ねてドキドキした視聴者も多かったはず。
しかも彼女は、多聞くんをF/ACEのメンバーオーディション時から追い続けており、グループ結成からデビュー、そして現在に至るまでの2年間をずっと見守ってきた筋金入りの古参でもある。サバイバル番組ファン勢が思わず「わかる!」と共感で頷いてしまうアニメ作品が、果たしてこれまでにあっただろうか。 これぞリアルなオタク像。その熱量を包み隠さず映し出す『多聞くん今どっち!?』は、推しを応援し続けてきたあなたの物語でもあるのだ。

うたげちゃんは推し活のためにハウスキーパーのバイトを始める。職場の先輩の代わりに入った家事代行現場が推しの多聞くんの部屋だったことから始まる物語。しかも、そこにいたのはアイドルとしてファンを笑顔にするイケてる多聞くん、通称イケ原くんではなく、様々なことを気にして、ジメジメと湿度高めに気に病むジメ原くんだった。そんな彼に時に喝を入れ、また別の時にはアイドルとしてどうあるべきかを本人に対してまさかの指南をし、自信をつけさせるうたげちゃん。目の前にいる推しは、アイドルとしてのスイッチがオフになっている状態。リアルに恋するリアコなファンではなく、あくまでもアイドルとオタクを分ける境界線を頑なに守る彼女は、オタクの鑑といえる。
ライブ演出は圧巻! F/ACEを彩る個性派メンバーたち
うたげちゃんの視点を通して描かれるF/ACEは、豊かな表現力と3Dアニメーションのきらめきで魅せる5人組。アイドル作品だからこそ、音楽とは切り離せない本作だが、多聞くんのほかにもメンカラが青で王子様担当の坂口桜利くん(CV:千葉翔也)、メンカラが緑のいやし担当・橘敬人くん(CV:畠中佑)、メンカラが黄色でエンジェル担当の石橋ナツキくん(CV:天﨑滉平)に、メンカラが紫でCOOL担当の甲斐倫太郎くん(CV:長岡龍歩)、と個性溢れるメンバーは、それぞれを歌唱表現に定評があるキャストが担当しており、歌と映像で見せるパフォーマンスはアニメの画角を飛び出すレベルの魅力を放つ。

うたげちゃんが当てた彼らのファーストドームライブの倍率は95倍。東京ドームだとすると、応募総数は約522万通を超えていることになり、その数字だけでもF/ACEがどれほど人気のグループなのかが伺える。テレビ越しにも伝わるバチバチのダンスと華やかなフォーメーションで魅せる場面がふんだんにちりばめられており、彼らがライブに定評あるアイドルであることも伝わってくる。

中でもドームでのライブシーンは壮観だ。F/ACEが巨大ビジョンに映し出され、ステージ上のカメラに向けてファンサをすれば、画面越しにも視線が合ったと思わされて歓声をあげたくなる。さらに2階スタンド席後方から大きく引きの画角で映されるペンライトの光に満ちた客席が見えるドーム天井席の景色も最高。どんなに遠い座席であっても、推しのライブを輝かせる光の一助になれた喜びと、誰にも負けないくらいに声を出して歓声をあげるファンの気持ちを描いたドームライブによって、視聴者は一人残らず彼らのファン、つまりE/YESの視点に連れていかれるのだ。





















