仲野太賀、『虎に翼』になくてはならない存在に 優三の複雑な心情を細部まで誠実に描写

『虎に翼』仲野太賀にしか出せない“愛嬌”

 こうして優三は、人生においての一つの区切りを迎えることになる。本人が納得の上で結論を出したとはいえ、はたから見るとこの決断はあまりに口惜しい。なんとかまた試験に挑戦してはくれないかと思わずにはいられない。願わくは優三が寅子と共に弁護士として活躍する未来が見たかった。だがこの決断は、優三にとって悪いことばかりではないのだろう。長く暗いトンネルから脱したら、そこには新たな人生が待っている。優三の顔からは、そんな穏やかで晴々した気持ちさえ感じられた。

 
 演じる仲野は、こうした複雑な心情を細部まで誠実に描写する。受験に緊張していつもと様子の違う優三、試験を終えた晴れやかな様子の優三、夢を諦める悔しさと同時に、寅子を祝う暖かい優三。そのどれもが確かに私たちが見てきた優三の姿であり、『虎に翼』になくてはならい存在なのだと確信できる。一人の“ヒューマンドラマ”を作品に溶け込ませる仲野の芝居の力には、つい魅了されてしまう。

 
 長く居候していた優三だが、次週はついに猪爪家を出ることに。家族同然の存在だからこそ淋しさもあるが、それでも優三は新たな道を歩まなければならない。次週、優三を取り巻く環境はどう変化するのか、そして寅子や猪爪家との関係がどう変化するのかを見守りたいと思う。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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