『虎に翼』伊藤沙莉&小林薫の連携による“逆転劇” 寅子の「はて?」が研ぎ澄まされていく
検察官の日和田は、暴れる直言を取り押さえ、自傷を防ぐために看守が自らの判断で革手錠をしたと説明するが、ここで寅子の「はて?」が発動する。歩み寄る穂高に、傍聴席の寅子は「監獄法施行規則第49条」と伝えた。旧監獄法の細則を定める条項で、看守は監督する上長の許可を得なければ、革手錠を使用できない。看守が暴れる直言を放置したまま許可を得るために取調室を離れたか、あるいは規則に反して独断で手錠をかけたとは考えにくい。その時、取調室にいた検察官の指示があったはずだと穂高は指摘した。
穂高の理路整然とした論調に日和田はうろたえる。裁判の推移を見守っていた裁判官の桂場(松山ケンイチ)は日和田に説明を求め、記憶が定かではないと答える日和田の矛盾を穂高は再び突いた。直言の自白の信用性は失われ、被告人側に絶対不利と思われた裁判の風向きが変わった。
当初は素朴な疑問だった寅子の「はて?」は、法律を学ぶことで研ぎ澄まされ、嘘を見抜く鋭さを兼ね備えるようになっている。はるの手帳を見直すことから始まり、穂高との連携による逆転劇は寅子の奮闘なくしてあり得なかった。裁判官の自由な心証に訴えかける臨機応変な弁論の応酬は、リーガルエンターテインメントのスリルが詰まっていた。
形勢逆転の裏には桂場のアシストもあった。裁判官として厳格に真実を見極めようとする姿勢はあいまいな立証を許さなかったのだろう。そのことで、桂場は有力政治家に目を付けられる。検察出身の貴族院議員・水沼(森次晃嗣)に「君の正義感を発揮する時は今ではない」と釘を刺されるのだが、司法の独立を守らんとする桂場も、次世代のために道を切り開く役割を担っていることを知らせていた。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK