『グリム組曲』ダークな世界観と風刺が見事に融合 “観る童話”として蘇らせた意欲作に

 一方、ビジュアル面では、『カードキャプターさくら』や『×××HOLiC』などで知られる創作集団「CLAMP」がキャラクター原案を担当しており、その独特の美学が光る。中でも、「ブレーメンの音楽隊」に登場するロバや、「赤ずきん」のスカーレットのデザインには、CLAMPならではの洗練されたタッチが感じられる。また、CLAMPが得意とするメガネキャラ枠として、ヴィルヘルムの存在感も抜群だ。

 しかし、ダークな世界観とオムニバス形式という設定は、これだけこだわりの要素が詰め込まれているだけに、一見するとニッチで閉鎖的な印象を与えかねない(一方で、“刺さる”ファンもいることは間違いない)。だが、アニメーション制作を手がけるのは、『バブル』『SPY×FAMILY』『王様ランキング』など独自の表現技法で数多くのヒット作を生み出してきたWIT STUDIOである。彼らの手腕によって、『グリム組曲』のやや閉じてしまいがちなイメージにつながりかねない設定が、『ブラック・ミラー』や『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)を彷彿とさせる、絶妙な後味の悪さで昇華されている点も見事だ。

CLAMPキャラ原案『グリム組曲』制作秘話を鈴木達央&Pが語る 「今のWIT STUDIOがわかる」

CLAMPがキャラクター原案を務めたNetflixオリジナルアニメシリーズ『グリム組曲』の配信直前トークイベントが4月13日、ア…

 監督陣の個性、音楽と画のこだわり、CLAMPとWIT STUDIOのコラボレーションが生み出す、ダークでスリリングな童話の世界。それは、私たちが知っているグリム童話とは一線を画す、新しい童話の体験を約束してくれる。『グリム組曲』はダークファンタジーやグリム童話ファンのみならず、意欲作を求める目の肥えたアニメファンにとっても、最高のコレクションになること間違いない。

 各話に散りばめられた象徴やメタファーが巧みに映し出しているのは、現代社会の問題や人間の普遍的な欲望、葛藤だ。残酷で後味の悪い物語の背後には、時に私たち自身の姿が透けて見える。そんなグリム兄弟が編纂した物語集が、現代に“観る童話”として蘇る瞬間を目撃できるかもしれない。

参照
※ 4月13日実施『グリム組曲』の配信直前トークイベントにて

■配信情報
Netflixシリーズ『グリム組曲』
Netflixにて独占配信中
キャスト:福圓美里(シャルロッテ)、鈴木達央(ヤコブ)、野島健児(ヴィルヘルム)ほか
監督:第一話「シンデレラ」金森陽子、第二話「赤ずきん」赤松康裕、第三話「ヘンゼルとグレーテル」橋口淳一郎、第四話「小人の靴屋」鎌倉由実、第五話「ブレーメンの音楽隊」竹内雅人、第六話「ハーメルンの笛吹き」仲澤慎太郎、プロローグ・エピローグ:久保雄太郎、米谷聡美
脚本:横手美智子
キャラクター原案:CLAMP
キャラクターデザイン:大杉尚広
音楽:宮川彬良
アニメーション制作:WIT STUDIO
制作協力:Production I.G
プロデューサー:和田丈嗣
エグゼクティブプロデューサー:櫻井大樹
製作:Netflix

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