『ミス・ターゲット』松本まりかがハマり役 “令和版『やまとなでしこ』”的作品になる予感
なんでだろう。本気の恋だけ、叶わない。
『ミス・ターゲット』(ABCテレビ・テレビ朝日系)のポスターに添えられたキャッチコピーを見て、「うっ、分かる……」と共感した人も多いのではないだろうか。わたしも、そのひとりである。西野カナも、2015年リリースの「もしも運命の人がいるのなら」で、<それでも昔から/好きな人には好かれないし>と歌っていたが、本気になればなるほど上手くいかなくなってしまうのが、恋愛のあるある。正攻法なんてものはないし、努力と結果は比例しない。だからこそ、わたしたちは翻弄されてしまうのだろう。
ここ最近は、恋愛に奥手だったり、仕事に邁進しているキャラクターをヒロインに据える物語が多いが、わたしは『やまとなでしこ』(フジテレビ系)の桜子(松嶋菜々子)や、『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)のサエコ(石原さとみ)のように、恋愛百戦錬磨系のヒロインが好き。なので、『ミス・ターゲット』のあらすじを読んだとき、「絶対に面白いやつだ……!」とうれしくなった。
本作の主人公のすみれ(松本まりか)は、数々の男を手玉に取ってきた恋愛詐欺師だ。「恋は、落ちるものではない。落とすものだ。追うのではなく、追わせる。恋愛はツール」とかなり歪んだ恋愛観を持っており、悪事で荒稼ぎをする男性にターゲットを絞って完全犯罪を成し遂げている。騙す相手によって、服装や髪型、趣味趣向までをガラリと変えてしまうところは、まるで『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)のダー子(長澤まさみ)のよう。そのため、第1話が始まってしばらくは、「なるほど、爽快エンタメとして楽しもう」と思っていた。
しかし、35歳を迎えたすみれが、結婚詐欺から足を洗って婚活をスタートさせると、風向きが大きく変わっていく。詐欺師としては百戦錬磨だったはずなのに、本気の恋はどうもうまくいかないのだ。しかも、冴えない和菓子職人・宗春(上杉柊平)のことが、なぜか気になってしまう。男の基準は金で、信じられるのは福沢諭吉だと思っていたのに! 『ミス・ターゲット』は、ダークヒロインが男を手玉に取っていく物語じゃない。すべての恋愛を思い通りに動かしてきたすみれが、“初恋”に落ちていくピュアなラブストーリーなのだ。