『虎に翼』男子学生のヤジは現代を暗喩する 「本気なんて目に見えない」という金言も

『虎に翼』男子学生のヤジは現代を暗喩する

 後日、完成した脚本を読んでいたよね(土居志央梨)が涼子たちに書き直しを命じる。たとえ甲子が民事訴訟を起こしても婚姻予約不履行は認められないとされているのにもかかわらず、脚本の最後に「弁護士にご相談を!」「損害賠償を請求できます!」といった希望をもたせるような文言で締められていたからだ。

 加えて、よねは涼子たちに対して、結婚を逃れるための時間稼ぎや主婦の暇つぶしにすぎないと罵倒し、自らは「本気で弁護士になって世の中を変えたい」と口にする。結婚から目を背けていることが事実であることを認めた涼子に対し、寅子の口からはお決まりの「はて?」の二文字が。寅子は「本気なんて目に見えないもので、どっちが上とか下とか、それこそくだらないことじゃないかしら?」と言い放つ。たとえ、動機がよねのように大層なものではなくとも、女子部に集まっている全員が法を学び、置かれた環境を変えたいと望んでいる。立派な動機が全てではない、これから何をするのかが最も大切なことなのだ。

(中央黄色い着物)猪爪寅子役・伊藤沙莉

 そして、明律祭の当日がやってきた。甲子役の寅子は女子部を存続させるために、めいっぱいの演技を見せていたが、観劇に来ていた男子学生から次々とヤジが飛び、一触即発の事態に。寅子やよねは必死で応戦するが、男子学生からの罵倒は止まらない。当時を生きる寅子たちは、どれだけこのような場面に遭遇してきたのだろうか。きっと私たちが考える何十倍も経験してきたことだろう。そして、この時代から約90年が経った現代でも女性が学問を学ぶことに対して、嘲笑う人が一定数いる事実がとても悲しい。学問は平等であるべきだ。

(手前中央)猪爪寅子役・伊藤沙莉

 「ちょっとー!」という寅子の声が響き渡り、コメディチックに終わった第12話。この騒動がきっかけとなり、女子部が不利にならないといいのだが……。寅子の前にまた困難が立ちはだかる。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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