名作の陰にピート・ドクターあり! 傑作『ソウルフル・ワールド』を劇場で観るべき理由

『ソウルフル・ワールド』は劇場で観たい!

 忙しさに追われて最近夜空しか見ていないなという時も、逆にやることが本当はあるくせに何もできなくて無感情のまま携帯の画面をスクロールしている時も、なんだかもったいない気持ちになる。人生の時間を無駄遣いしている気がしてしまうのだ。でも大人になるにつれて器用に時間が使えるようになるどころか、ただその無駄遣いに自覚的になるだけで、もっと苦しい気持ちになる。その苦しさで息継ぎができなくなりそうになる時、ディズニー&ピクサー映画『ソウルフル・ワールド』を観るたびに心が落ち着くのは自分だけだろうか。

大人にこそ刺さり続けてきたピクサーの凄さ

『ソウルフル・ワールド』©️2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 ピクサー作品といえば、子供の頃から自由で独創的な世界観を魅力に感じ、大人になって観ると、よりその“深さ”に涙腺を刺激されるようなものが多い。中でも大人向けに感じる『ソウルフル・ワールド』を監督したピート・ドクターは、ピクサーの“泣かせ番長”のような存在だ。

 ピクサー・アニメーション・スタジオの原点とも言える『トイ・ストーリー』の原案を担当し、『モンスターズ・インク』で監督デビュー、そして『カールじいさんの空飛ぶ家』と『インサイド・ヘッド』、『ソウルフル・ワールド』でアカデミー賞長編アニメーション賞を獲得し、現在はピクサーのトップとなるチーフ・クリエイティブ・オフィサーとなったドクター。そのほかにも、『ウォーリー』や『トイ・ストーリー』シリーズ、そして『ソウルフル・ワールド』と同じく劇場公開された『あの夏のルカ』と『私ときどきレッサーパンダ』、第96回アカデミー賞長編アニメーション賞ノミネート作『マイ・エレメント』など、ピクサーの泣ける名作の陰には、彼がいる。

 そんなドクターが手がけてきた作品の中でも、『ソウルフル・ワールド』はやはり人気が高く、ディズニープラスでの配信当時は、劇場公開を強く望む鑑賞者の声も多く上がっていた。

『ソウルフル・ワールド』©️2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 主人公のジョー・ガードナーはジャズ・ミュージシャンを夢見ながら中学校の音楽教師をしている。非常勤だったが、ついに正式の採用の誘いを受けるも、夢追い人の彼にとっては良いニュースなのか悪いニュースなのかわからない。しかしちょうどそんなタイミングで、ニューヨークで最も有名なジャズ・ミュージシャンとクラブで演奏する機会を得る。夢への切符を掴んだと張り切るジョーだったが、浮かれて街を歩いている最中にマンホールに落ちてしまった……という、ビター味溢れるあらすじとなっている。でも大丈夫、ピクサー作品なのでそんな救いのない物語にとどまらず、ジョーはなんと魂として“ソウルの世界”に迷い込んでしまうのだ。

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