『光る君へ』吉高由里子×柄本佑の“幸せで悲しい”まなざし 大河史に刻まれたラブシーンに

『光る君へ』大河史に刻まれるラブシーン

 廃邸へやってきたまひろを道長は強く抱きしめる。「会いたかった」という道長の言葉を聞いた時、まひろは一瞬心苦しげな表情を浮かべる。抑えきれないほどの道長への想いを痛切に感じているように見えた。2人は互いへの想いを確かめ合うかのように口づけを交わした。道長は兼家や姉・詮子(吉田羊)から、己の使命というものを突きつけられていた。そんな道長は、身分を捨て、家族を捨て、このまま2人で生きる道を望んだ。「一緒に都を出よう」「俺たちが寄り添って生きるには、それしかない」という道長の言葉に、まひろは確かに幸せを感じていた。けれど、まひろにはそれを受け入れることができない。

「あなたが偉くならなければ、直秀のような無惨な死に方をする人は、なくならないわ」

 まひろの道長を想う気持ちに嘘はない。それどころか、以前にも増して想いは強くなっている。まひろは鳥辺野で道長とともに直秀(毎熊克哉)たちを埋葬した時、自分もまた、道長と2人だけで遠くに行きたいと願っていたと打ち明ける。しかし、2人で都を出ても世の中は変わらない。まひろを演じる吉高が見せる表情や台詞の言い回しから、道長への想いとそれぞれが果たすべき使命を前にまひろの心が揺れている様子が伝わってきて、胸が締め付けられる。道長が「まひろと生きていくこと、それ以外に望みはない」と言った時、まひろの心は嬉しかったに違いない。それでもまひろは、よき政をすることこそ道長の使命であると懸命に伝える。

「道長様が好きです。とても好きです。でも、あなたの使命は違う場所にあると思います」

「わたしは都であなたのことを見つめ続けます。片時も目を離さず、誰よりも愛おしい道長様が、政によってこの国を変えていく様を、死ぬまで見つめ続けます」

 強く抱き合う中でお互いの想いが溢れ出し、2人はそのまま肌を重ねる。官能的な場面だが、廃邸のわびしさとまひろの切なさに満ちた面持ちによってどこか物悲しく映る。まひろが涙するのを見て戸惑う道長に、「人は幸せでも泣くし、悲しくても泣くのよ」とまひろは言う。

「幸せで悲しい」

 身を寄せて見つめ合うまひろと道長には深い愛を感じる。まひろは今まさに幸せを感じている。それと同時に、2人だけでは決して生きられないことも理解している。「また会おう……これで会えなくなるのは嫌だ……」という道長に、まひろは曖昧なほほえみを返すだけで何も言わなかった。何も言えなかったようにも思える。まひろの純粋でまっすぐなまなざしが、幸せで悲しいその心情を物語っていた。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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