山時聡真が体現する青年から大人への変化 “声”の名演は『君たちはどう生きるか』でも

山時聡真が体現する青年から大人への成長

 2023年7月に全国公開された宮﨑駿監督作『君たちはどう生きるか』がアニー賞や英国アカデミー賞で次々に受賞している。同作で主人公の少年・眞人の声を担当した山時聡真が、現在放送中の『マルス-ゼロの革命-』(テレビ朝日系)にも出演している。

 山時が演じているのは、“ゼロ”こと美島零(道枝駿佑)を中心とした動画集団・マルスの頭脳担当、呉井賢成。地頭がよくネットに強いが、高校に入ってから成績が下がり落ちこぼれてしまった。そのためか、クラスメイトや教師を見下した発言をよくしている。だが、心根は優しいようで、第4話では賢成がオンラインゲームで出会った白川妃奈(田辺桃子)を救おうと立ち上がった。

 『君たちはどう生きるか』の眞人は、比較的無口だが、その声は凛としていて少年らしい純粋さがあった。でもそれが弱々しくも見え、最初の頃の眞人はどこか自信がなさそうだった。しかし青サギに出会い、自分の意思で冒険を始めると、その姿も次第に変化。様々なことを経験していくうちに声がはっきりとし始め、好奇心が抑えられなくなってきていることが伝わってきた。眞人は夢のような不思議な冒険を経て、少年から青年への第一歩を踏み出したのだ。そうそうたる声優陣の中で、1人だけずば抜けて若く、しかも日本にも海外にもファンの多い宮﨑作品の主人公を演じるというのは相当なプレッシャーがあったに違いない。だが、山時はそれを跳ね退けて、眞人の微妙な変化を見事に演じ切っていた。

 そうは言っても眞人は基本的に物静かな性格であった。それに比べると本作で演じている賢成は、年相応でとても高校生らしい。うまくクラスに馴染めていないといっても動画研究部のみんなとはわちゃわちゃして楽しそうだ。妃奈には淡い恋心を抱いていて、一緒に遊んでいたゲームへの課金がきっかけで妃奈が“闇バイト”という名の売春をしていると知ると、いても立ってもいられず走り出してしまっていた。きっといつもの冷静な賢成なら、彼女を救うためにもっと策を練ったはずである。自分の中にある抑えられない衝動に従っての行動は、大人にはない若さの象徴といえるだろう。

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