『おっさんずラブ』と『正直不動産』、続編はなぜ成功? 前作からの“変化”を考える
『正直不動産2』が描く歩み寄ることの大切さ
『正直不動産2』は、2022年4月期に放送された『正直不動産』の続編である。大谷アキラ(漫画)、夏原武(原案)、水野光博(脚本)による同名コミック(小学館)を原作に、脚本を根本ノンジ(S1、S2ともに)、清水匡、木滝りまが手掛けている。
護摩行と山﨑努と映画『タンポポ』のオマージュから始まった本作。それこそ冒頭の石田(山﨑努)の言葉そのままに、シーズン2における永瀬(山下智久)は、「嘘がつけなくなる風」に抗うのではなく、風を「受け入れた上でうまく付き合って」いて、まさにシーズン1最終話において宣言したように「正直不動産の永瀬財地」という言葉が似合う働きぶりである。一方、彼の真っ直ぐさをより際立たせるのが、新キャラクターである神木涼真(ディーン・フジオカ)だ。
永瀬が不動産業界を明るく照らす正義のヒーローなら、タップダンスとともに現れた神木は、「地獄に落ちても」踊り続ける様すら想像できる、不動産業界の闇を思わせるダークヒーローである。彼のみならず、Z世代の十影(板垣瑞生)、地主の息子・藤原(馬場徹)、フルコミッション契約・黒須(松田悟志)と、続々と投入される新キャラクターを通して本作が描こうとしているのは、それぞれの働き方の違いの肯定ではないか。
正直者・永瀬とカスタマーファースト・月下(福原遥)の働き方ももちろん素晴らしいが、一方で、ミネルヴァ不動産の花澤(倉科カナ)のブレないいい仕事ぶりもしっかりと評価される。また、第6話において描かれた、永瀬たちに度々「Z世代」と一括りにされがちな十影の心情と、思わぬファインプレーは、それまで一貫して描かれていた、同僚たち・顧客を冷静に俯瞰し、分析しているかのような十影の眼差しとともに、決して一括りにできない人の心の複雑さを雄弁に伝えていたりもする。
そしてそれは、『不適切にもほどがある!』(TBS系)のように明確に言語化しているわけではないが、常に「昭和的言動」とパワハラを諫められている大河(長谷川忍)と、「タムパ」重視の十影という対照的なキャラクターをどちらも愛すべき存在として肯定しつつ令和の会社を描くことで、本作は実に優しく穏やかに、異なる世代、価値観を持つ人々が一つの会社に集うことの魅力と、それぞれが互いの良さを認め、歩み寄ることの大切さを教えてくれるのである。
■放送情報
『おっさんずラブ-リターンズ-』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~0:15放送
出演:田中圭、吉田鋼太郎、林遣都、内田理央、眞島秀和、大塚寧々、金子大地、伊藤修子、児嶋一哉、井浦新、三浦翔平ほか
脚本:徳尾浩司
音楽:河野伸
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ)
監督:瑠東東一郎、山本大輔、Yuki Saito
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/ossanslove_returns/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/ossans_love
公式Instagram:https://www.instagram.com/ossanslove/
『正直不動産2』
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:山下智久、福原遥、市原隼人、泉里香、松本若菜、長谷川忍、板垣瑞生、松田悟志、馬場徹、伊藤あさひ、財津優太郎、山﨑努、大地真央、倉科カナ、高橋克典、草刈正雄ほか
原作:大谷アキラ(漫画)、夏原武(原案)、水野光博(脚本)
脚本:根本ノンジ、清水匡、木滝りま
音楽:佐橋俊彦
主題歌:小田和正 「so far so good」
制作統括:黒沢淳(テレパック)、山本敏彦(NHKエンタープライズ)、長谷知記(NHK)
プロデューサー:室谷拡(テレパック)、樋渡典英(NHKエンタープライズ)
演出:川村泰祐(アンドリーム)、金澤友也(テレパック)ほか
写真提供=NHK