『ブギウギ』小雪×趣里の芝居が生む“連帯”の微笑ましさ 愛助を愛した者同士に芽生えた絆

『ブギウギ』愛助を愛した者同士の絆

 スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)が一緒に愛子を育てている。それが夢だと重々分かっていても、現実であってほしいと願わずにはいられなかった。

 だけど、『ブギウギ』(NHK総合)が第19週が幕を開けると、もうそこに愛助の姿はない。箱根旅行中に撮影した写真の中で微笑む愛助。その写真に語りかけた後、夢で愛助と並んでいた縁側で一人、愛子をあやすスズ子の後ろ姿に胸が痛む。

愛助の遺影に手を合わせる福来スズ子(趣里)。

 一方で、スズ子は意外にも元気だった。愛子の誕生、つまりは愛助の死から3カ月。「これからスズさんとお呼びしてもよろしいですか?」という山下(近藤芳正)からの突然の申し出に、「プロポーズかと思いましたわ!」と冗談を言えるまでになっていた。一人での子育てが大変で、良くも悪くも悲しむ暇がなかったのだろう。だけど、愛子が寝静まった後はふと愛助を思って涙が流れてくる。もう何度目だろうか、悲しみの中でも気丈に振る舞うスズ子を見るのは。彼女がこれまでも大切な人を失ってきたことを知っている愛助も心配だったろう。置いていく方も、置いていかれる方も辛い。

 そんな中、スズ子に歌の仕事が舞い込む。これからスズ子は子育てに加え、2人分の生活費を稼がなくてはならない。おそらく、何があってもスズ子を支えると決意した山下が必死で取ってきた仕事なのだろうが、「辛いことがあったら歌ってください」と手紙で言い残した愛助からのプレゼントにも思えた。スズ子が歌でなら自分の気持ちを発散できることを愛助は知っているから。

左から、山下達夫(近藤芳正)、福来スズ子(趣里)

 ただ現実問題、愛子の夜泣きで十分な睡眠も取れていない今のスズ子には仕事をする余裕はなかった。まだ生まれたばかりの子供を置いて仕事に行ってもいいのかという母親としての苦悩もあるだろう。そんなスズ子の背中を押したのは、愛助の母・トミ(小雪)だった。

 ある日、話があると大阪からスズ子の家を訪ねてきたトミ。スズ子と同様にパッと見は元気そうだが、彼女もまた完全に立ち直れてはいない。なにより、トミの場合は最後まで愛助とスズ子の結婚に反対していたことが心残りとなっていた。自分は間違っていたのではないかと自問自答するトミに、「家族や夫婦に間違いなんてあらしません」とまっすぐその目を見て答えるスズ子。愛助が生前、「家族でも違う人間やろ」とトミに言ったのを思い出す。彼もまた、トミの生き方を否定することはしなかった。トミは自分のやり方で会社を大きくしてきた。それを認めた上で、愛助は自分で違う生き方を選ぼうとしていたのである。

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