『相棒』が映し出した“人を育て上げること”の難しさ 右京の哲学、深い知識が光る
右京の推理により事件の全貌が明かされる。道明寺がこうした芸術への狂った執着を持ち、若い才能にのめり込み過ぎてしまったことで悲劇は起きたのだ。道明寺自身が余命3カ月であることでやけになり棺に入らない分の美術品を叩き割って破壊しようとする暴力性や、倫之助に芸術活動のために全ての人間関係を断つよう迫ったことなど、観ていて胸の痛むシーンが続く。物語を最後まで観れば、改めて「器の悲鳴が聞こえて」と咄嗟に口に出した雪乃の気持ちが痛いほどわかる。自身も美術家である雪乃は、生み出された芸術品が壊される“痛み”を誰よりもわかっていたのだろう。
そして、美術品が壊されることを阻止するため雪乃と正孝が作品を盗み出すよう仕向けていたのは、実は道明寺の仕業だ。これは“罪に問われた雪乃や正孝が孤独になることで、己と向き合い芸術に没頭し続けられる”という歪んだ思想に導かれたものだった。全てが計画通り、まるで鮮やかなチェスの試合のようにコマが動いた第14話であったが、右京は“最初の一手”を見逃さない。狂った執着を紐解き、若手が羽ばたく環境を作るべきだと道明寺を諭すのだった。
右京の人間性や哲学、そして深い知識が光った第14話。ラストは亀山が陶芸教室で作ったティーカップが、“誰へのプレゼント”なのかも明かされ、物語は温かい気持ちで締めくくられた。
■放送情報
『相棒 season22』
テレビ朝日系にて、毎週水曜21:00〜放送
出演:水谷豊、寺脇康文、森口瑤子、鈴木砂羽、川原和久、山中崇史、篠原ゆき子、山西 惇、田中隆三、松嶋亮太、小野了、片桐竜次、杉本哲太、仲間由紀恵、石坂浩二、美村里江、新納慎也、真飛聖ほか
脚本:輿水泰弘
監督:権野元
制作:テレビ朝日/東映
©︎テレビ朝日
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