『アイのない恋人たち』岡崎紗絵の演技は“全身”で届く 真和が求めている“アイ”はどっち?
誰か一人の言葉が、時には呪いとなり、また時には最高の薬となる。ドラマ『アイのない恋人たち』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の第2話が描くのは、ただの出会い以上のものを視聴者に感じさせる“今向き合いたい人”への深い感情だ。前回のラストで現代の愛の形を繊細に映し出した本作。第2話は、マッチングアプリを通じて生まれた絵里加(岡崎紗絵)と真和(福士蒼汰)の絆を中心に物語が展開した。
テレビドラマの脚本家代理としてチャンスを掴んだ真和は、大きな期待を胸に執筆を始める。しかし、絵里加からの「あんたに、人を幸せにする脚本なんか絶対書けないから!」という言葉が呪いのように突き刺さり、筆が進まない状況に陥ってしまう。前回、高校時代の約束を果たそうと、実は1人学校に明日を運んでいたことを鑑みても、真和は意外と繊細な人物なのかもしれない。
一方で、絵里加自身も真和へ放ってしまった自分の発言を「今から考えたらやりすぎたかな」と後悔していた。確かに、“人を幸せにする脚本を書きたい”真和にとっては、絵里加の言葉の衝撃は大きすぎた。それをわかっているからこそ、絵里加も再び会う勇気が持てずにいる。そして何より、マッチングアプリだからこその「退会」の2文字で永遠に出会えなくなってしまう絶妙な距離感がこれまた生々しい。真和は脚本を書けないまま、迫る締め切りに苦しむことに。
何も進まないままの真和は、愛(佐々木希)と遭遇する。「ねえ、15年前のアタシたちが今の自分たちを見たらどう思うんだろ?」という愛の言葉は、本作のすべての登場人物が抱える疑問なのかもしれない。
そんな中、“アイ”のない他の登場人物たちもそれぞれの問題に直面していた。まずは愛を求める奈美(深川麻衣)と雄馬(前田公輝)から。相変わらず母親からの結婚のプレッシャーに苛まれていた奈美は、マッチングアプリで予期せず出会った雄馬と2人で食事に行くことに。奈美の自分の価値を下げるような発言に、つい血が上ってしまった雄馬の発言は、少々おせっかいが過ぎるようにも思える。しかし、それも真実の愛を求める彼のまっすぐさゆえなのだろう。
また性経験のない自分に自信がなく、「いっそ恋愛なんてなくなった方が、世界は平和になると思わない?」と恋愛を遠ざける多聞(本郷奏多)に、栞(成海璃子)はモヤモヤした気持ちを隠しきれない。雄馬とは違うケースだが、多聞もまた愛に対して不器用な人物であり、手探りで彼なりの優しさを栞に手渡しているように見えた。
そして今回の見どころといえば、愛の計らいによって、ブックカフェで再会を果たした絵里加と真和の和解の場面だろう。自身の過ちを反省した絵里加は、真和に謝罪の言葉を述べる。絵里加の「あなたなら書ける。絶対書ける」「だから書け! 私たちを励ます物語を」というエールは、真和の胸に届いたようだ。
親友である多聞と雄馬には恋愛アドバイザー的なポジションでアドバイスをしていたにもかかわらず、絵里加の言葉一つで、しっかりとやる気スイッチを押されてしまう。そんな真和の単純で可愛らしい一面が垣間見えた場面でもあった。