『光る君へ』花山天皇をどう演じた? 本郷奏多「嫌われるキャラクター作りはしたくない」

『光る君へ』本郷奏多インタビュー

 吉高由里子主演で、『源氏物語』の作者・紫式部/まひろの生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』がついに幕開け。脚本家の大石静が描く強烈なキャラクターの数々がSNSを賑わせている。そんなキャラクターの1人が、のちに65代・花山天皇として即位する東宮(皇太子)の師貞親王。演じるのは、『麒麟がくる』に続き二度目の大河ドラマ出演となる本郷奏多。漢詩の指南中に奇行ともいえる自由な振る舞いを見せていた彼はどのような大人に成長するのか。脚本から受けた花山天皇の印象や、印象に残った共演者とのエピソードについて語ってもらった。(苫とり子)【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

大石静が描く花山天皇は「めっちゃ“人”」

――これまでの撮影を振り返ってみていかがですか?

本郷奏多(以下、本郷):顔合わせの時にプロデューサーの方がメインキャスト一人ひとりの名前と役柄を簡単に紹介してくださったんですが、僕の場合は「勉強嫌いで女好き。変わった天皇・花山天皇を演じる本郷奏多さんです」でした(笑)。最初は「なんじゃその紹介は!」と思いましたが(笑)、その言葉通り、花山天皇は一般的な天皇のイメージからはかけ離れた、常識に囚われない人物なので、自由に楽しく演じさせていただいています。

――天皇という立場の人間を演じる上でのプレッシャーやこれまでの役とは違う重みはありますか?

本郷:そういうものはあまり感じていません。NHKさんは花山天皇のように立場ある人を演じる時には必ず所作稽古をつけてくださるのですが、今回に関しては「一応教えるけど、あまり囚われないで好きなように動いていいよ」という感じだったので、本当に自由にやらせていただいていますね。監督さんたちもいかに天皇のイメージを崩すかの方に時間を割いてくださったので、こうあるべきという固定観念は捨て、思い切って演じました。

――花山天皇に関する史実の中で役作りのヒントを得たものがあれば教えてください。

本郷:出演が決まった時に花山天皇に関する資料もいただきましたが、「この人がこういうことをしました」という事実は書かれていても、その背景や心情はそこから見えてくるものではないと思っています。なので史実よりも、すでにたくさん肉付けしてくださっている脚本の台詞から感情を読み取り、周りの方との空気感を大事にしながら演じています。

――史実に大胆な肉付けを加えた大石静さんが描く『光る君へ』の脚本にどのような印象を持たれましたか?

本郷:どのキャラクターもみんな人間らしいですよね。天皇って作品によってはあまり感情が描かれなかったり、神々しい存在として描かれたりすることが多いですけど、僕が演じる花山天皇は真逆。感情が豊かで、すごく“人”なんですよ。嫌なことがあったら怒るし、嬉しいことがあったら喜ぶ。そういうふうに一人ひとりが命ある人間として描かれている印象があります。

――花山天皇とご自身の共通点、あるいは全く違うなと感じられる部分は?

本郷:先ほども言ったように感情が豊かなところは、自分と似ています。ただ花山天皇は周りと隔離された狭い世界で育ったがゆえに、物事を広く俯瞰して見ることが苦手で、人を疑ってかかることもないので騙されたり利用されたりしてしまうんです。そこが僕とは違う点であり、ちょっとかわいそうだなと思う部分でもあります。

――本郷さんはそんな花山天皇の役柄とどのようなアプローチで向き合っていらっしゃるのでしょうか?

本郷:大石さんが描く花山天皇は一見変だけど、純粋で素直なんですよね。若くして天皇になってしまったけど、自分の好きなものは好きだし、やりたくないことはやりたくない。要はまだ子供なんだなという印象が強いです。足で扇子をいじって遊んだり、大人たちを裾でほれほれとからかってみたり、その言動が無邪気でかわいらしく見えることもあると思います。僕自身も嫌われるキャラクター作りはしたくないなと思っていて、どこか常に無邪気で素直な部分を残しながら演じることを心がけています。

――お話を聞く限り、本作の登場人物は人間味溢れていて、視聴者も身近に感じられるのかなと思いましたが、舞台は千年以上も前の日本。平安時代や『源氏物語』の世界に対して、本郷さんはどのようなイメージを持たれていますか?

本郷:僕はあまり歴史に詳しくないのですが、台本や資料を読む限りでは、占いや呪術が時に政治を左右するほど重要だった時代というイメージです。我々の感覚からしたら考えられないですよね。「そんな大事なことをオカルト的なもので決めていいの?」って。でも、それが一番大事とされていた社会があったんだなということがすごく衝撃でしたし、観ている方々も楽しめるポイントなんじゃないかなと思います。

――もしご自身が平安時代にタイムスリップしたらやってみたいことはありますか?

本郷:占っている人がどんなテンションなのかをちょっと見てみたいですね。本気で言っているのか、それとも自分が得するようなことを言っているのか。自分の目で確かめたいですけど、単身で乗り込むのは危険なので、実際は細々と暮らしていくと思います……(笑)。

――これまで撮影した中で印象に残っている場面や、視聴者の方に注目してほしいシーンがあれば教えてください。

本郷:花山天皇はのちに退位し、出家するんですが、役者人生で初めて坊主頭になりました。特殊メイクなので、実際に頭を丸めたわけではないんですが、すれ違う人みんなに「似合うね」と褒めていただけて嬉しかったです。もしかしたら僕の気持ちを盛り上げるために言ってくれただけなのかもしれないけど、まんざらでもなく喜んじゃいました(笑)。

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