『BLOODY ESCAPE』は“新宿育ちの少女”の物語でもある 私たちが“常識”から逃れるために

『BLOODY ESCAPE』反逆の始まり

ルナルゥという“非力な少女”の勇姿が胸を打つ

 しかし、外の世界へと旅立つことは必ずしも幸せを意味しない。本作がルナルゥの物語を通じて視聴者に問いかけるのは、ある場所での常識が別の場所では非常識とされることの難しさ、そして「郷に入っては郷に従え」という言葉の重みだ。

 さまざまなクラスタを渡り歩いてきたキサラギは、「納得しづらいルールもあるけど、それなりの歴史や背景がある」と静かに言い放つ。その言葉を聞いて理解したかのようにうなずくルナルゥに、キサラギはさらに言葉を重ねる。

BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-

「そのルールは時に知らないものに牙を剥く。“知らない”では済まされないんだ」

 ルナルゥは後に人形町クラスタで捕らわれ、この言葉の深い意味を痛感することとなる。不条理なことで溢れた世の中で、非力な少女が「社会」に属さず生きていくことは難しい。それでもなお、わずかな希望を追い求め、“ある決断”に踏み切ったルナルゥの強さには、胸打たれた。そしてその姿に、思わず自分自身を省みた。

BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-

 私たちの心の奥深くには、知らず知らずのうちに刻まれてしまった“ルール”が根付いている。生まれたその瞬間から、学校、職場、時には家庭といった環境にまで、この“ルール”は影響を及ぼし、私たちの生活はまるで透明な糸で操られているかのようだ。しかし、私たちが「やりたいこと」を自由に実現できないとき、その理由は、果たして環境にのみあるのだろうか。ルナルゥが物語の終わりに見せた勇気は、私たち自身の内に潜むその糸を断ち切る力を与えてくれるように思えた。

BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-

 ルナルゥとキサラギの逃走劇は、自らの信じる「常識」が、実は他者によって作られた刷り込みに過ぎないことを気づかせてくれる。『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』が描くのは、その枷から自由になるための反逆の始まりだ。

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映画『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』は、アニメ『コードギアス』シリーズ、『ONE PIECE FILM RED』…

■公開情報
『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』
全国公開中
原案・監督・脚本:谷口悟朗
声の出演:小野友樹、上田麗奈、斉藤壮馬、内田雄馬、ゆきのさつき、倉田雅世、福山潤、置鮎龍太郎、中谷一博、大橋彩香、高橋李依、長縄まりあ、速水奨、三木眞一郎、日高里菜、山寺宏一
キャラクターデザイン原案:コザキユースケ
企画・プロデュース:スロウカーブ
アニメーション制作:ポリゴン・ピクチュアズ
主題歌:アツキタケトモ「匿名奇謀」(Polydor Records)
配給:ギャガ
©2024 BLOODY ESCAPE製作委員会
公式サイト:https://bloody-escape.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/BLOODY__ESCAPE

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