OKAMOTO'S オカモトショウが『BLOODY ESCAPE』を絶賛 「3DCGアニメの土台になる」

オカモトショウが谷口悟朗新作アニメを語る

 映画『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』は、アニメ『コードギアス』シリーズ、『ONE PIECE FILM RED』の谷口悟朗が原案・脚本・監督を手がけた作品だ。舞台は“魔改造”された実験都市・東京。改造人間となった主人公・キサラギ(CV.小野友樹)の逃走劇を軸に、東京制覇を狙う吸血鬼集団「不滅騎士団」、殺された親分の復讐を誓ったヤクザ軍団とのバトルを3DCGアニメーションで描いている。

 本作の見どころや魅力について、マンガ、アニメに造詣が深いOKAMOTO'Sのボーカル、オカモトショウに語ってもらった。

「逃げる映画が面白いのってどうしてなのかな?」

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』オカモトショウ

ーー映画『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』が2024年1月5日に公開されます。まずは率直な感想を教えてもらえますか?

オカモトショウ(以下、オカモト):面白かったです! 全体的に過激というか、エクストリームな感じがあったし、それぞれのキャラクターがよく動くんですよね。それは物理的な動きだけではなくて、キャラのバックグラウンド、そこから出てくる信念や思いが行動につながっている。そこが観ていてアドレナリンが出る要素だと思いました。SF作品としてもよかったし、3DCGアニメのクオリティも高くて。このポスターの横で喋るのは出演者か監督だけだと思ってたけど、自分が出ていると勘違いしてもらえたらうれしいです(笑)。

BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-

ーー(笑)。映画の舞台は、“魔改造”された未来の東京。人類の種の保存のために、人間はさまざまに姿を変え、クラスタと呼ばれる保護区でそれぞれの社会を構築しているという設定です。

オカモト:SF映画の多くがそうなんですけど、冒頭の部分で大まかな世界観が文字で説明されるんですよ。僕はSF好きなので、最初の説明の時点で「OK、好きなやつだ」と思いましたね(笑)。谷口悟朗監督はアニメ『コードギアス』シリーズ、『ONE PIECE FILM RED』など大きい作品を作ってこられた方です。今回の映画も「子どもから大人まで楽しめる作品なのかな?」と思っていたんですけど、もちろんそういう要素もありつつ、印象としては大人がしっかり楽しめる映画じゃないかと思っています。設定の凝り方もそうだし、SFの濃度が高いんですよ。人間が区分けされて、住む場所が決められるに至った理由はそこまで説明されないのですが、おそらく人間の手に負えないような何かが起きて、種の保存のためにそうせざるを得なくなった。しかもそれを決定したのは、人間じゃないみたいなんですよ。つまり“徹底した管理社会のディストピア”という設定なんですが、細かいディテールを含めてしっかり設定されているし、考察しがいがあるんじゃないかな。保護区によって雰囲気がまったく違うのもいいんですよ。“新宿クラスタ”にはヤクザがめちゃくちゃいたり。

BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-

ーー「女性は水商売をやるしかない」みたいな街ですからね。

オカモト:自分たちが10代の頃の歌舞伎町は一斉にきれいにされて、そこまで危険を感じなかったんですよ。でも、ここ5年くらいの歌舞伎町はぜんぜん雰囲気が違うじゃないですか。この映画の新宿クラスタは、今の状況がさらに進んでしまった感じなんですよね。吸血鬼の集団(不滅騎士団)の拠点になっている人形町クラスタという地域も出てくるんですが、それぞれの街がどういう経過を辿ってきたのかも堀りたくなりますね。

オカモトショウ
ーー今の現実と地続きだし、「こういうことは起こり得るかも」という感じもあって。人の制限が厳しく制限されているのも、コロナ渦のときみたいだなと。

オカモト:確かに。考えてみると、江戸時代もそうじゃないですか。もちろん外国との交流はないし、国内の移動も制限されていたわけだから。俺らは好きなところに行けるのが当たり前だと思ってるけど、時代によっては全然そんなことはないんですよね。自由に移動できなくて、情報を制限されたら、外に何があるかもわからないだろうし。これはちょっとネタバレになるかもしれないけど、この映画のなかでは“横浜”がポイントなってるんですよ。「近っ!」と思ったけど、そこまで行くのはめちゃくちゃ大変で。イーロン・マスクが「人類は火星に移住すべき」って言ってるけど、(映画における“横浜”は)同じような感覚なのかも(笑)。

ーー“ここから逃げないといけない”という強いモチベーションですね。

オカモト:そうそう。あと、登場するキャラクター全員が、支配者から虐げられているのもポイントだと思います。誰もが誰かによって自由が効かない状態にされているというか。そういう窮屈な状態のなかで、全員が「どうやって生きていくか」を考えているんですよね。それは主人公のキサラギ(人体実験により改造人間となったサイボーグ・ヴァンパイア)やヒロインのルナルゥ(新宿クラスタに住む普通の人間)もそうだし、吸血鬼軍団のリーダー・転法輪もそう。置かれた状況に屈する人もいるなかで、「自分は絶対に屈しない」ってあがく姿は観ていて痛快だし、力をもらえますね。

『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』

ーー一方で“集団か個か”というテーマもあるような気がします。吸血鬼軍団もヤクザたちも、「個人の功績より集団が生き残ることが重要」という価値観で動いていて。

オカモト:そうですね。主人公たちはもちろん、吸血鬼たちも隔離されて抑圧されているわけで、「自分たちの自由を勝ち取るんだ」という闘争を繰り広げていて。ただストーリーのなかでは、全体よりも個の思いが勝ってしまう場面が何度か出てくるんですよ。転法輪は吸血鬼のリーダーで、「この少数民族を絶やしてはいけない」という力で動いているんだけど、その奥にはーーもしかしたら見て見ぬふりしていたのかもしれないけどーーキサラギに対する個人的な恨みがあって。そういうことも一つのテーマなのかなと思いますね。マイノリティとマジョリティの本質を含んでる気もしますけど、それも今と地続きにある未来の話だからでしょうね。今、世界で問題になっている「どうしたらいいんだろう」ということにもつながっているし、最後は個人の心が大事というところはすごく心に残りましたね。

オカモトショウ

ーー“逃げる”というモチーフについてはどうですか? スティーヴ・マックィーンの『大脱走』(1963年)など、古典的なテーマなのかなという気もしますが。

オカモト:そうですね。俺らは『プリズン・ブレイク』世代なんですけど(笑)、親に「だったらコレも好きなんじゃない?」って『アトランティス』と『大脱走』を勧められたんですよ。それが古い映画に興味を持つきっかけだったんですけど、逃げる映画が面白いのってどうしてなのかな? 尺?

オカモトショウ
オカモトショウ
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ーー映画の長さの問題ですか(笑)。

オカモト:1時間半くらいで描くのにちょうどいいのかも(笑)。あとは躍動感かな。いろんな逃げ方があるけど、『BLOODY ESCAPE』は電車なんですよ。「この時代に電車が走ってるんだ?」という意外性もあったし、なんかカッコよかったです。車や武器のデザインもいいし、ガジェット好きな人も楽しいと思います。

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