1月『コナン』編集版、2月『鬼滅』先行上映は慣例化? 閑散期の穴埋めも抜かりない東宝

閑散期の穴埋めも抜かりない東宝

 1月第1週の動員ランキングは『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』が週末3日間で動員39万9000人、興収5億5000万円をあげて3週連続1位に。1月8日までの累計成績は動員329万6500人、興収44億1300万円。先週のコラムで50億円の大台が目標となるだろうとしたが、年が明けてからは独走状態が続いていて、最終興収60億円超えも目指せるペースとなってきた。

 一方、先週末2位の『ウィッシュ』と3位の『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、ここにきて週末興収も累計興収もほぼ横並びの状態に。まだ比較的勢いが残っているのは、公開が1週早かった『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の方で、2024年正月映画2位の座を巡っての攻防が今後もしばらく続く見込みだ。

 初登場作品として最高位の4位につけたのが、TVシリーズ特別編集版『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』。祝日を含む4日間の動員は17万人、興収は2億3900万円。この成績は昨年1月に公開された『名探偵コナン 灰原哀物語~黒鉄のミステリートレイン~』の同期間の動員17万7000人、興収2億4700万とほぼ同水準。シリーズにコアなファンベースが存在していることがわかる。

 TVシリーズ特別編集版『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』の配給元である東宝は、来月も昨年放送されたシリーズの最終話と今年放送予定のシリーズの第1話を合わせた『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』の公開が控えている。つまり、2年連続で1月はコナンのTVシリーズの編集版、2月は鬼滅の新しいTVシリーズの先行上映という流れとなるわけだが、このスケジュールを「新作不足による苦肉の策」というわけではなく、昨年も他社を圧倒する収益を記録した東宝が戦略的に組んでいるところに、現在の日本の映画界の状況が象徴されている。つまり、もはや「外国映画よりも日本映画」や「実写作品よりもアニメーション作品」という段階をとっくに超えて、劇場でかかる「映画」の概念そのものが最大手の映画会社によって切り崩されつつあるのだ。

 特に昨年後半以降、大ヒット作の乏しいシネコンにとっては、閑散期の穴埋めをしてくれるこのような作品の存在は救いとなるだろう。しかし、入場者プレゼント商法への依存や、ライブビューイングの隆盛と合わせて、いつの日かシネコンが「映画を観る場所」ではなくなっているような気がしてならない。そのことが良いことなのか悪いことなのかは、また別の話だが。

■公開情報
TV シリーズ特別編集版『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』
全国公開中
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
脚本・構成:宮下隼一
音楽:大野克夫
キャスト:高山みなみ(江戸川コナン)、山口勝平(怪盗キッド)
テーマソング:WANDS「大胆」(D-GO)
製作:トムス・エンタテインメント、読売テレビ、小学館
配給:東宝
©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2024
公式サイト:https://www.conan-movie.jp/2024/tvspecial/
公式X(旧Twitter):@conan_movie
公式Instagram:@conan.official
公式TikTok:@conan_pr_official

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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