イム・スジョン×イ・ドヒョン『メランコリア』が映す社会への指摘 “正義”と“数学”が軸に

『メランコリア』が映し出す社会への指摘

子供たちが感じている親や周囲からの重圧

『メランコリア』(tvn公式サイトより)
『メランコリア』(tvn公式サイトより)

 アソン高校のような教育現場で、気にかけなければならないのは、親からの期待やプライドに押しつぶされそうになっている子供たちの本当の気持ちを知ること。彼らが物語の中で大きな動きをすることになるのは言うまでもない。

 「特別」と囃し立てられてきたスンユも親からの過大な期待と周囲からの好奇の眼差しにトラウマを持っており、議員の父親を持つイェリン(ウ・ダビ)も自分が優秀な学生であることを維持するため、どんな手にも縋っていた。そしてギュヨン(チェ・ウソン)はスンユを過度にライバル視して嫌なうわさを流していた。彼らのように全て完璧であることが良しとされる家庭で育ち、誰にも本心を見せられずに誤った方向に進んでしまう子供たちには、心を許せる存在が必要だが、手を差し伸べたユンスはむしろ突き飛ばされてしまう。それでも彼女は教育者として、何度も彼らに向き合って、正しい道に戻そうと手を尽くしていく。“教育”“学力”といった将来目指すものに近づくために必要な武器が、なぜかプライドや地位そのものになってしまっている社会への指摘がこの作品には込められていると言える。

 良い教育を受けられるのも運不運という世界の中で、忘れられてしまう“正義”という存在。劇中で「証明を解く時の数学者は正直」とも語られているように、“正義”と“数学(正直さ)”という軸を持ち合わせているユンスとスンユは教育の現場をより良くしてくれる存在だった。まさにアルブレヒト・デューラーの「メランコリア」で描かれている一筋の光のように。

参考

https://www.metmuseum.org/ja/art/collection/search/336228

■配信情報
『メランコリア』
Netflixにて独占配信中
出演:イム・スジョン、イ・ドヒョン、チン・ギョン
原作・制作:キム・サンヒョプ、パク・ミヨン、キム・ジウン

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