DCヒーロー映画の受難は続く 『アクアマン/失われた王国』北米No.1でも苦戦の理由

『アクアマン』新作、北米1位でも苦戦の理由

 ハリウッドのクリスマス映画興行は一筋縄ではいかない。クリスマス当日の12月25日が月曜日となった今年は、直前の週末興行がやや落ち込む結果となった。クリスマスイブのデートやレジャーに、映画鑑賞が有力な選択肢として挙がりやすい日本とは異なり、アメリカでは家族とのディナーやショッピング、翌日の準備が重視される。「どうしてもすぐに観なければいけない映画」が登場しないかぎり、優先順位は必然的に下がってしまうのだ。

 したがって、『スター・ウォーズ』や『アバター』、あるいは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)などのイベント映画が不在の今年は、スタジオ各社がクリスマスシーズンに新作を投入したものの、どの作品も予想を下回るスタートとなった。

 DC映画最新作『アクアマン/失われた王国』は、初登場No.1となったものの、その意味で観客の鑑賞意欲を煽りきれなかった。12月22日~24日の興行収入は2810万ドルで、前週の第1位『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』より1000万ドル以上低い。クリスマス当日を含む4日間では3800万~4000万ドルとなる予測だが、スーパーヒーロー映画全体の失速を再び証明した形だ。

『アクアマン/失われた王国』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. TM & ©DC

 本作はジェイソン・モモア主演&ジェームズ・ワン監督『アクアマン』(2018年)の続編。前作は米国興収3億3510万ドル、世界興収11億5202万ドルというDC史上に残るヒット作となったが、続編は渋い滑り出しとなった。初動成績は『マーベルズ』の4610万ドルを下回ったほか、DC映画としても『シャザム!~神々の怒り~』の3011万ドルに及んでいない。

 厳しいスタートの理由は明らかだ。現行のDC映画ユニバースはリセットが決まっており、本作がその最終作。2025年以降の新体制では、ジェイソン・モモア演じるアクアマンも再登場しない可能性が高く、熱心なファンの関心も下がってしまった。Rotten Tomatoesで批評家スコア36%・観客スコア79%という評価も、口コミ効果を期待するにはいささか低い数字である。

 幸いにも本作は、中国など海外市場で8010万ドルを稼ぎ出し、世界累計興収は1億2000万ドルに到達。製作費は2億500万ドルと、大作映画としてはまだ抑え目の金額とあって、コスト回収の可否は海外での興行にかかっている。日本公開は2024年1月12日。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

 もっとも、『アクアマン/失われた王国』を手がけるワーナー・ブラザースは、異例の配給戦略でクリスマスに臨んでいる。今週第2位の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』もワーナー作品だが、他の新作を寄せつけない興行を続けており、12月25日には米国興収8350ドル、世界興収2億5486万ドルとなる見込み。同25日にはミュージカル映画『カラーパープル』も控えており、それぞれターゲットの異なる新作3本を準備した。一球入魂ではなく異なるカラーをそなえた3作品の同時投入で、年内最終週はベスト3の制覇を狙う。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる