『相棒』右京と亀山から学ぶ、“信頼”することの大切さ 事件解決後も残るモヤモヤ感
人はいろいろな理由で嘘をつく。だから、たとえば周りを傷つけないための嘘は「優しい嘘」と言われるように、嘘にもいろいろな種類が生まれる。もちろん、自分の体裁を保つためや見栄のための「ずるい嘘」もある。「嘘つきは泥棒の始まり」ということわざもあるが、『相棒 season22』(テレビ朝日系)の第7話は、小さな嘘が積み重なって生じるすれ違いが大きな事件を引き起こす発端となってしまった。
再結成が決まり、すぐに発売されたツアーのチケットも完売するほど人気が再燃している4人組ロックバンド「ディープクルー」のボーカル・矢崎(金子昇)が、路地裏で亡くなっているのが発見された。警察が捜査を始めると、矢崎の妻は元アイドルで、今も時々テレビに出ているタレントだが、別居して2年になり、離婚話が進んでいたと分かる。事件に興味を持った右京(水谷豊)と亀山(寺脇康文)は、所属事務所を訪問。バンドメンバーや事務所の社長、マネージャーたちから話を聞く。すると、全員に確かなアリバイが無い上、気になる話も聞こえてくる。矢崎はかなり自分勝手な人物で、22年前の解散も、今回の再結成も、一人で勝手に決めてしまったというのだ。
しかも最近も練習をめぐってメンバーと衝突。また、唯一の女性メンバー・安本(細野今日子)は当時、矢崎と交際していたが、一方的に捨てられたらしく、顔には最近できたと思われるアザが。さらに、メンバーの林田(江頭勇哉)が昔作った曲を矢崎が盗用したという話や、事務所の社長・吉澤(中原翔子)から多額の借金をしていたという噂も。すなわち、殺害の動機は、すべての関係者にあった。
関係者に話を聞けば聞くほど、矢崎は人から恨まれそうな行動ばかりしている人間に見えてくる。だが、実は数年前から右耳の聴力を失い、それをカバーするように左耳に補聴器をつけて生活していたが、最近ではその左耳も聞こえにくくなっていたことが判明。しかもそれを知っていたのは妻だけで、マネージャーや吉澤には知らせていなかった。さらに安本が「矢崎に捨てられた」と言っていたのは嘘で、実際は安本の浮気が原因で破局。盗用を疑われていた林田の曲は、正式に矢崎が林田に依頼したものだった。林田が作ったものだと一目でわからないようになっていたのは、アレンジなどに実力差を感じ、悔しくなった林田が自分の名前を出さないように矢崎に頼んだのだった。また、林田が言うには、もともと音楽に熱中できればよかった矢崎は、吉澤が本来自分の収入になるはずのお金を横領していることに気がついてはいたが、知らないふりをしていたそう。矢崎の別の顔を知れば、彼が音楽以外のことにあまり興味を示さず、自分勝手というよりは、単に言葉が足りなかっただけだということが分かってくる。
言葉が少ない人といえば右京である。でも、右京は矢崎のように人に煙たがられてはいないように見える。それはやはり、亀山の存在が大きいのではないだろうか。亀山は右京とは逆に自分の感じたこと、思ったことを全て話す人だ。若い頃は、その言葉選びが極端かつどストレートすぎて、人とぶつかることもあった亀山だが、年齢を重ねるとともに経験も重ね、今では優しくも心に響く言葉を相手に返すことができるようになっている。そして、右京と亀山の間には大きな信頼がある。だから右京は、亀山には必要なことは必ず伝え、最近では冗談を言って笑わせることもするようになった。