三吉彩花、想像を絶する肉体改造を経てたどり着いた新境地 チャン監督も絶賛の稀有な能力

三吉彩花、肉体改造を経てたどり着いた境地

 “アクション映画”は映画の中でも一大ジャンルとして、古今東西多くの作品が作られてきた。その多くは、スーパーヒーローだったり、超人だったり、ある種、現実離れしたキャラクターのアクションとして捉えることがほとんど。しかし、極稀に、キャラクターが感じる“痛み”がダイレクトに伝わってくる作品がある。Prime Videoで配信中の映画『ナックルガール』は、まさに直球の攻撃が心に響く一作だ。

 そんな本作の主人公・蘭を演じたのは三吉彩花。これまでの出演作でも、類まれな身体能力を見せるシーンはあったが、本作では文字通り身体を鍛え抜き、戦う一人の人物として、映画に君臨している。

 謎の犯罪組織の存在に気づいたプロボクサーの蘭は、妹を救出するため、たった一人で裏社会に踏み込んでいく。オーディションを経て主役の座を射止めた三吉は、日韓共同作という本作にどんな覚悟で臨んでいたのか。「三吉さんなら間違いない」と即決したというチャン監督も同席の上、本作の撮影裏を聞いた。

チャン監督「世界を見渡してもなかなか見つけることはできない」

ーー最初に発表されたキービジュアルを見たときから三吉さんのカッコよさに驚きました。撮影を終えて、チャン監督は三吉さんのどんなところに素晴らしさを感じていますか?

チャン:日本には優れた俳優がたくさんいますが、三吉さんはその中でも特別な存在だと確信しています。三吉さんにお会いする前に、彼女の出演作をすべて拝見して、「アクションもできる俳優」だとは理解していたんです。でも、実際に撮影を進めていくと、「アクションも演技も素晴らしい俳優」だと分かり、本当に想像以上でした。彼女の肉体づくりはもちろん、演技をする上でも台本を研究し、現場でも作品をもっといいものにしようとあくなき探究心を持っている。多くの場合、肉体的に優れていても、心まで作り上げてくれる俳優にはなかなか出会うことができません。三吉さんはモデルとして、世界で活躍されています。それゆえに、“モデル”として見られてしまう部分もあったかもしれないのですが、本作をきっかけに、“俳優”として、もっともっと世界に羽ばたいてくれるのではないかと今は感じております。

三吉彩花(以下、三吉):ありがとうございます。本当に恐縮です。日本にも素晴らしい作品はたくさんあるのですが、どうしても私自身の身長やルックスの面で、日本の作品の中で自分がどう溶け込んでいけるのかと難しさを感じていた時期があったんです。俳優としての需要は一体どこにあるのだろうかと。そんなときに、本作に出会い、チャン監督が私に託してくださいました。その期待に応えたいという気持ちで臨んだ一作だったので、今は本当にこの作品に出会えて良かったと心から思います。

三吉彩花、チャン監督(写真=池村隆司)
(左から)三吉彩花、チャン監督

ーー『ナックルガール』のタイトルの通り、序盤から三吉さんのアクションに圧倒されっぱなしでした。

三吉: アクションが必要な作品はこれまでにも出演させていただいていたのですが、これだけ最初から最後まで戦う作品は初めてでした(笑)。最初はプロボクサーであり、途中からは妹を助けるためにナックルを握って戦う。作品を成立させるためには何よりもリアリティが大切で、演技を超えてそこに存在しないといけない。そのためにトレーニングを必死で重ねていきました。

チャン:アクション映画は言葉を超えて肉体で伝えることができるので、万国共通要素を持った作品であり、それはつまり多くの観客に楽しんでいただけるジャンルだと思っています。だからこそ、アクション映画を作る上で大切になるのがそのリアリティです。そのリアルを作るために三吉さんがご自身の肉体をもって応えてくれました。また、本作は日韓合作による作品ですが、日本人スタッフの皆さんが私たちを信じてくださったことも非常に大きかったです。日本は撮影における安全基準が非常に高く、撮影をする上で最初はハードルがあったんです。でも、韓国人クルーの技術の高さに納得していただき、そのハードルを越えることができました。両国の高い技術が噛み合ったこと、互いに信頼し合えたことで、クオリティの高い作品に仕上げることができました。

ーー三吉さん演じる蘭が受けるダメージが画面を通り越してこちらにも伝わってくるようでした。近年のアクション作品で、ここまで痛みを感じるものはなかったように思います。

三吉:そう感じていただけたならうれしいです。

チャン:本当に三吉さんだったからこそだと思います。

三吉彩花
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ーー蘭のトレーニングシーンは、空中に吊るされた中で腹筋をするシーンや、ぎりぎりの場所で倒立するシーンなど、三吉さんの本物の動きに本当に驚きました。ともすればこのようなシーンは省くこともできたかと思います。

チャン:蘭はこの後にこれまでボクシングで戦ってきた相手を遥かに上回る敵と戦う必要があります。しかも、競技ではなく、ルールなど存在しない、審判もいない、相手が再起不能になるまで終わらない本当の殴り合いです。そんな戦いに挑むためには、彼女が想像を超えるようなトレーニングを積むシーンが必要だと考えました。ボクサーではなく、“ナックルガール”になるためです。ビジュアルとしても異常ともいえるトレーニングをしている姿を見せる必要がありました。そのためにスタントマンも用意をしていたのですが、驚くべきことに三吉さんはそのほとんどを自分でこなしたんです。こんな俳優は世界を見渡してもなかなか見つけることはできないと思います。

三吉:ワイヤーをつけたり、安全面の配慮も最大限にしていただいたので、ギリギリのところまで自分で挑戦したいという思いでした。少しでも説得力を持った映像になっていたのなら本当に嬉しいです。

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