『ブギウギ』りつ子の辛辣さから考える“義理と人情”の本質 音楽の楽しさがスズ子を励ます

『ブギウギ』りつ子の辛辣さがスズ子を救う

 りつ子の物言いは辛辣だ。けれどりつ子は特定の誰かにだけ手厳しいわけではない。大人たちはスズ子を「女王」とおだてるばかりで、スズ子本人の意思は省みていない。そんな中、りつ子はスズ子のことを大人たちが担ぐ歌手の“福来スズ子”ではなく“スズ子”という一人の人間として見つめ、対等に扱う。

「浮かれて自分が見えなくなってるんじゃない?」

 りつ子の言葉を受けて、スズ子は悔しくも我に返った。下宿屋に帰ってきたスズ子は傷心したままではあるが、落ち着きを取り戻している。スズ子を現実に引き戻したのはりつ子の言葉だが、スズ子を励ます存在も忘れてはならない。下宿屋に勝手にあがりこんだ妙に明るいおじさんと変に格好つけたおじさんこと、羽鳥善一(草彅剛)と藤村薫(宮本亞門)の存在だ。2人はスズ子を待ちながら、新しい曲を練り続けていた。羽鳥と藤村が夢中になって詞を直しているのを見て、スズ子は微笑んだ。

 揺るぎのない意思を持つりつ子の存在、大好きな音楽が楽しくて仕方がない羽鳥や藤村の存在が、義理と恋に破れたスズ子の心を支える。第33話の幕引きは、スズ子がふっと笑った姿だった。この経験が糧になる、そんな希望が見えた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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