『ブギウギ』りつ子の辛辣さから考える“義理と人情”の本質 音楽の楽しさがスズ子を励ます

『ブギウギ』りつ子の辛辣さがスズ子を救う

 『ブギウギ』(NHK総合)第33話では、スズ子(趣里)が引き抜きを受けているという話が梅丸にも伝わる。スズ子の移籍話は梅丸の社長・大熊(升毅)の耳にも入っていた。スズ子が知らぬ間に板挟みにあっていたであろう辛島(安井順平)が、「全く……君は僕を殺す気ですか!」とスズ子に強く訴えかける姿や、取り乱すあまり契約書を食べてしまう姿などから、彼の苦労がうかがえる。

「君には義理や人情ってものがないのかね!?」

 辛島の言葉にスズ子はハッとする。「この世はな、義理と人情で出来てんねん」といった母・ツヤ(水川あさみ)の言葉を思い出したスズ子は、「ワテ……とんでもないことをしてもうた……」と呟いた。

 しかし、ツヤと事務所が話す“義理と人情”は似て非なるものに感じられる。「今まで君を育てたのはどこだと思ってるんだ!」という辛島の訴えに、スズ子は罪悪感を抱いたかもしれない。けれど、物語中盤に松永(新納慎也)が言った「我々、大人に任せておけば大丈夫だ」という言葉や、移籍問題をお金で解決しようとする姿、後述する佐原(夙川アトム)の台詞を聞いていると、まだ若く、業界の事情も知らないスズ子を、周りの大人たちが“義理と人情”という言葉を使って振り回していることに気づかされる。

 そんなスズ子を失意の底から現実に引き戻すのが茨田りつ子(菊地凛子)の言葉だ。

 辛島の目を盗んで松永に会いに行き、想いを告げたスズ子だが、松永には恋人がいた。傷心のスズ子に「別れのブルース」が重なる。失恋の痛手と事の重大さに泣き続けるスズ子に、佐原は声を荒らげ、「全く世間知らずもいいとこだよ。ちょっと売れたからって何様のつもりなんだ」と言い放った。それを聞いたりつ子は「あら、女王様なんて言って佐原さんたちもおだててたじゃない」と釘を刺す。そして、りつ子は淡々とした口調のまま、「どうするか選ぶ権利はこの子にあるんじゃないかしら。この子がどこでどうしたいかなんてこの子にしか決められないんだから」と続けた。

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