『大奥』“家定”愛希れいかを守るための大奥が誕生 有功の思いは流水紋とともに瀧山へ

『大奥』有功の思いが流水紋とともに瀧山へ

 一方で、傷つける人もいれば、その傷を癒し、手を差し伸べ光ある場所へ連れ出してくれる人もいる。大奥は狭いが、そうした普遍的な人の世を映し出す場所だ。哀しみだけではなく、人との出会いで生まれる歓びや希望もそこには必ずある。特に正弘との出会いは家定の人生を大きく変えた。正弘は家定のための大奥、しかし子を産み育てる場所ではなく、彼女を保護するための場所を作り、芳町から迎えた瀧山にそこを任せる。その瀧山もまた、罪人の母を持つが故の引け目を「そなた自身の咎ではない」という言葉で正弘に取り払ってもらった。

 だが、そもそも瀧山との出会いがなければ、正弘はあのまま肩身狭く生きていたかもしれない。ほんの少しでも運命の歯車がずれていたら、と想像して途方に暮れるような出会いの奇跡。有功は家光(堀田真由)との出会いでそれを実感したからこそ、大奥で巡り合った者たちの心に少しでも安寧をもたらそうとしたのだろう。その水流の先に今、正弘から命を受けた瀧山がいる。

 その後、一橋治済(仲間由紀恵)が残した呪いを断ち切ろうとする広大院の協力や黒船来航という大きな出来事も味方し、呆気なくこの世を去った家慶に代わって家定が将軍職に就任。そこに幕政を我がものにしようと企む薩摩・島津家から、家定の正室として胤篤(福士蒼汰/二役)が送られてくる。大奥の始まりを象徴する有功と瓜二つな彼の登場で、物語が終わりに近づいていることを実感した。時代の変革期ということもあり、ここからさらにスピード感が増していくであろう本作。不思議な親しみのある瀧内の正弘、凛々しく品のある古川の瀧山、力強さと繊細さを併せ持った愛希の家定といったそれぞれ魅力ある登場人物と、彼らの慈しみあるやりとりを噛み締めながら大奥の行く末を追っていきたい。

■放送情報
ドラマ10『大奥』Season2
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:
【医療編】
鈴木杏(平賀源内)、玉置玲央(黒木)、村雨辰剛(青沼)、岡本圭人(伊兵衛)、中村蒼(徳川家斉)、蓮佛美沙子(御台・茂姫)、安達祐実(松平定信)、松下奈緒(田沼意次)、仲間由紀恵(一橋治済)
【幕末編】
古川雄大(瀧山)、愛希れいか(徳川家定)、瀧内公美(阿部正弘)、岸井ゆきの(和宮)、志田彩良(徳川家茂)、福士蒼汰(天璋院・胤篤)
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
音楽:KOHTA YAMAMOTO
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる