元携帯販売員が語る、『北極百貨店のコンシェルジュさん』が“働く20代女性”に刺さる理由
そしてもう一つ、本作には重要なテーマがある。それは、その仕事に就こうと思った“原点”の記憶だ。秋乃は先輩コンシェルジュの森に憧れてこの仕事に就いたが、理想と現実の乖離に頭を悩ませている。「こうなりたいのにできない」「もっとうまく立ち回れたらいいのに」と頭を悩ませた経験は誰にでもあるのではないか。そのような時に、自分を奮い立たせるのが、秋乃にとっての“幼い頃の憧れ”のような原点の記憶なのだと思う。その仕事に就きたいと思った理由や、外からその業界を見ていたときに惹かれた魅力。そんな“業界の一員”になる前の記憶こそ、実は後に自分を本当の意味で支えてくれるのだ。
しかし残念なことに、人は忘れる動物である。仕事に忙殺されることで、原点の出来事を忘れてしまうことはおろか、考える時間すらなくなってしまう人も多い。『北極百貨店のコンシェルジュさん』が「仕事を頑張るすべての人におくる、不思議でかわいい“動物×百貨店”エンターテインメント!」と銘打たれているのは、全ての人に原点に立ち返るきっかけを提供するためでもあるのかもしれない。
実際にSNSでは、「秋乃の奮闘っぷりにほっこりした」「動物たちがかわいい」という声だけでなく、「自分も仕事を頑張りたくなった」というような、仕事へのポジティブなエネルギーを作品からもらったことを示すコメントも多い。さらには「また来店したくなった」というコメントもあり、2回目、3回目の“来店”を終えた観客の投稿もかなり見かけた。
人は一人では生きていけない。そんなことはもうわかっている。しかし自分の仕事が、誰かの人生の一端に携わっていることを忘れていたような気がした。それを思い出させたくれたのは秋乃と、ずっと記憶の底の方で眠っていたあの日の自分だ。「人間のお客様」である私たちのそれぞれが、誰かのために働く意味とは。その答えが、北極百貨店にある。
■公開情報
『北極百貨店のコンシェルジュさん』
全国公開中
原作:西村ツチカ『北極百貨店のコンシェルジュさん』(小学館『ビッグコミックススペシャル』刊)
声の出演:川井田夏海、大塚剛央、飛田展男、潘めぐみ、藤原夏海、吉富英治、福山潤、中村悠一、立川談春、島本須美、寿美菜子、家中宏、七海ひろき、花乃まりあ、入野自由、花澤香菜、村瀬歩、陶山恵実里、氷上恭子、清水理沙、諸星すみれ、津田健次郎
監督:板津匡覧
脚本:大島里美
キャラクターデザイン・作画監督:森田千誉
音楽:tofubeats
主題歌:Myuk「Gift」(Sony Music Labels Inc.)
アニメーション制作:Production I.G
配給:アニプレックス
©2023西村ツチカ/小学館/「北極百貨店のコンシェルジュさん」製作委員会
公式サイト:https://hokkyoku-dept.com/
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