『日曜の夜ぐらいは...』は「今の時代のキツさを描きたかった」 脚本家・岡田惠和に聞く

常に考えている「何を書くべきか」「何を書きたいか」

ーー「持ち札は全部出す」と話されていましたが、岡田さんにとって『日曜の夜ぐらいは...』は、集大成と言える作品でしたか?

岡田:この年になると毎回集大成と言われるのが嫌なんですけど(笑)、全然そんなことは思っていなくて、常に変わっていきたいと思っています。今回も、新しいグルーヴが自分の中で生まれるんじゃないかと思って挑戦しました。

ーー確かに過去作を彷彿とさせる場面はたくさんあるのですが、結果的に全く違う作品に着地したと思います。

岡田:日本で何十年も作られている春夏秋冬に放送される1クールの連続ドラマの楽しさみたいなものも守りたいと思ったんですよね。同時に、ピンチが毎週起きて「どうなるのか?」というクリフハンガーだけで次週に引っ張るのも「どうだろう?」という気持ちもありまして。だから『日曜の夜ぐらいは...』には、どちらもあるんですよ。クリフハンガーで続く回もあれば、突き放して終わる回もあるし、のほほんと終わる時もある。だから、尻尾を掴まれないようにしたい、同じことを繰り返したくない、という感じはありましたね。

ーー僕自身、ドラマはほとんど配信で観るようになったのですが、このドラマだけは気になって、毎週リアルタイムで観ていました。

岡田:僕のドラマは登場人物がみんな良い人で、激しい物語が起こらないものを書く人と思われてきました。それは必ずしもいい意味だけではなかったのですが、今回に関しては「頼むから何も起こさないでくれ」という反響を放送中にたくさんいただいて。

ーー面白い反応ですよね。

岡田:「ドラマとして、つまらなくてもいいので、何も起こさないでくれ」「とにかく、この子たちに幸せになってもらいたい」と言われる機会が多かったです。それはドラマを観てくれた方がサチたちに乗ってくれたからだと思うんですよね。それはすごく財産になったし、自信にも繋がりました。仕掛けばかりの話でなくても、見守ってくれるし楽しんでくれるんだと思えた仕事です。

ーー今回は新設枠での放送でしたが、何か心掛けたことはありますか?

岡田:新設枠の第1作を書くことは今回が初めてだったので、とても光栄でした。今は配信もあり、リアルタイムでドラマを観るという習慣がだいぶ薄れつつあるので、“何曜日の何時”という概念自体は今後廃れていく文化なのかもしれませんが、今回は「日曜日の22時に放送するもの」として、書きたいと思いました。

ーー脚本を執筆する時、放送されるドラマ枠のカラーは意識されますか?

岡田:今とお客さんのいる場所が何もかも違うのでわからないかもしれませんが、90年代ぐらいまでは、20時台はティーン向け、22時台は大人の視聴者に向けた作品といった枠ごとのカラーがあり、放送枠の年齢層に向けて書いていました。その感覚が今でも強く残ってるのは朝ドラです。脚本家にも、やっと金ドラ(金曜ドラマ、TBS系金曜22時枠)が書けるといった、放送枠に対する意識が強くありました。そういった感覚は滅びつつあるのかもしれませんが、ボクサーにとって1ラウンド3分というリズムが体の中に刷り込まれているように、放送枠と時間帯を考えて脚本を書くという意識は残っています。

ーー脚本家の方って、性別も年齢も違う人の話を書けるのが凄いと今回改めて思いました。岡田さんはずっと自分と違う世代の若い人の物語を書き続けていますが、なぜそれが可能なのでしょうか?

岡田:僕は自分のことを語ろうとするとテンションが落ちるんですよ。「自分はどう思っている」「俺はこうだ」とは言わないし、言いたくないのですが、「人がどう考えてるんだろうか?」と考えている時はクリエイティブ魂が上がる。普段から「自分以外の人」を見て、「この人は何を考えて生きてるんだろう?」と考えて生きているので、20代後半の女性のような、自分とは何の接点もない人について書く方が、脚本家として楽しいです。

ーー最後に伺いたいのですが、1990年にデビューされて以降、岡田さんは毎年、休まずに脚本を執筆されています。どうしてここまで書き続けられたのでしょうか?

岡田:肉体的に疲れたと感じることはありますけれど、休む余裕なんて自分にはなかったですね。この仕事には安定した椅子が本当にないので、一度休んだら「ずっと休んでいていいよ」と言われると思っていました。長縄跳びを跳び続けて「引っ掛かったら、もう終わり」みたいな感じが自分の中には常にあるのですが、そのリズムで書いているからこそ、常に「何を書くべきか」「何を書きたいか」と考えている。常に誰かと次の企画の話をしていないと、自分が終わる感じがするから、書き続けているのかもしれません。

ーーでは、これからも今のペースで?

岡田:落ち着いて素敵な仕事を時々、みたいな余裕はないです。昔のテレビにはそういう文化もあったのですが、そういう感じでもなくなってきているので。連ドラは年に一回書けたら幸せだなぁという感じですかね。自分にオファーしたいと思ってくれている人がいる以上は、書き続けたいと思っています。

■リリース情報
『日曜の夜ぐらいは...』
11月8日(水)Blu-ray&DVD-BOX発売

【Blu-ray BOX】
価格:26,950円
品番:TCBD-1463
仕様:2023年/日本/カラー/本編456分+特典映像109分/16:9 1080i High Definition/DISC1:2層 DISC2〜DISC5:1層/音声:リニアPCM2chステレオ/字幕:なし/全10話/5枚組(本編ディスク4枚+特典ディスク1枚)

【DVD-BOX】
価格:22,000円
品番:TCED-7087
仕様:2023年/日本/カラー/本編456分+特典映像109分/16:9LB/片面1層/音声:ドルビーデジタル2chステレオ/字幕:なし/全10話/6枚組(本編ディスク5枚+特典ディスク1枚)

※仕様は変更となる場合あり

<特典映像>
◎メイキング集&クランクアップ集
◎制作発表会見
◎清野菜名・岸井ゆきの・生見愛瑠 スペシャルインタビュー
◎エレキコミックのあだ名君

<初回生産限定>
ヨシフクホノカ氏イラスト使用 オリジナルステッカー(サチ・翔子・若葉・みね・賢太イラスト)1枚

出演:清野菜名、岸井ゆきの、生見愛瑠、岡山天音、川村壱馬(THE RAMPAGE)、和久井映見、宮本信子ほか
脚本:岡田惠和
音楽:日向萌
主題歌:「ケセラセラ」Mrs. GREEN APPLE(ユニバーサルミュージック/EMI Records)
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー:山崎宏太、山口正紘、郷田悠(FCC)、浅野澄美(FCC)
監督:新城毅彦、朝比奈陽子、高橋由妃、中村圭良
制作協力:FCC
制作著作:ABCテレビ
発売元:ABCフロンティア
販売元:TCエンタテインメント
©︎ABCテレビ

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