かが屋を起用した意義が詰まった『この動画は再生できません』 S2も期待以上の快作に

『この動画は再生できません2』も快作

 視聴者投稿型の心霊映像番組を観て「こんなの本当なわけないがない」といった経験はないだろうか。SNSなどを覗いてみると、さも自分だけが真実に辿り着いたかのように「こんなの本当なわけがない」と看破している人たちを稀にみる。しかし「こんなの本当なわけがない」と言ってみたところで、それを論理的に証明できる人が何人いるだろうか。

 『この動画は再生できません』は、恐怖映像を集めたホラーDVDシリーズ『本当にあったガチ恐怖映像』に寄せられる視聴者投稿の恐怖映像の謎をオカルトライターの鬼頭(賀屋壮也)と編集マンの江尻(加賀翔)が映像制作者の視点から解き明かしていく新感覚のホラー解体ミステリ作品だ。2022年にテレビ神奈川とPrime Videoで放送・配信され、SNSを中心に話題となったのだが、この度『この動画は再生できません2』として帰ってきた。

 『この動画は再生できません』はかなり衝撃的なラストで終わったので、まさかシーズン2が作られるとは思わなかった。無論楽しい作品だったので続編が制作されることを祈っていたが、高いハードルがあったことは想像に難くない。またシーズン1を楽しんだ人の期待に応えなければいけない。『この動画は再生できません2』は見事そのハードルを乗り越えているし、あらゆる点でブラッシュアップが見られる。

第1話「affair」

 元々『この動画は再生できません』は出題編となる10分ほどの恐怖映像だけを放送し、その翌週に解決編となる謎解きパートを放送していた挑戦的な番組だった。種を明かしたシーズン2ではホラー動画パートを5分くらいにして解決編に力を注いでいる。個人的にはホラー動画パートにも力を入れてほしいし、前シリーズにあった「恐怖をロジックで解体する」という魅力が薄れてしまったきらいはある。とはいえ構成的には正しいと思うし、ブラッシュアップの手段としては理解できる。

第2話「gap」

 また、視聴者投稿動画パートの「ありそう」感が今回も完成度が高い。特に第2話のYouTuberコンビの生々しさはすごいし、第4話の理髪店夫婦の自然な演技も良い。低予算ながらリアリティある映像に仕上がっている。しかし先述した通り恐怖感は薄く、明らかにオカルトホラー要素がスポイルされている(鬼頭の存在がオカルトホラー要素を担っていると言えなくもないが)。とはいえ映像の謎を江尻が明確なロジックで真相を解き明かしていくさまは気持ちいい。特に第1話と第2話は真相がなんとなく察せられるものの、だからこそ真実を証明する過程の鮮やかさが光る。

第3話「INCIDENT」

 シーズン2の中で最も舌を巻いたのが第3話の「INCIDENT」だ。はっきり言ってシリーズを通して最もおもしろいエピソードに仕上がっている。ミステリ作品なので詳細は省くが、映像制作の視点に基づいた鮮やかな解決だけでなく「過去の映像の謎を解き明かす」という構成の物語として高い完成度を誇っている。また、オカルトホラー感が減ったシーズン2において、VHS時代特有の不気味な映像を見せてくれるのが嬉しい。「INCIDENT」は今後『この動画は再生できません』シリーズが続いていく中で、作品を代表するエピソードになるのではないだろうか。

第4話「endless」

 それから『この動画は再生できません2』は全話を通して「2人組」というものを描いている。第1話はZOOMっぽいWEB会議サービスを使って会話するカップル。第2話はさまざまな企画に挑戦する人気YouTuberコンビ。第3話は漫才の練習を記録するお笑いコンビ。第4話は24時間営業の理髪店を営む夫婦。様々な2人組を描くことで、かが屋演じる鬼頭と江尻のコンビとしての魅力が際立つようになっている。以前『この動画は再生できません』の記事を書いた時は「ホラーとお笑いの寒暖差」としてかが屋の2人を評価したが、『この動画は再生できません2』を観て改めてこのシリーズにかが屋を起用したのは正解だったことがわかる。

ホラーをミステリで解体? 『この動画は再生できません』が生み出す新感覚の魅力

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