ホラーをミステリで解体? 『この動画は再生できません』が生み出す新感覚の魅力

『この動画は再生できません』は必見!

 既にご存知かもしれないが『この動画は再生できません』というミニドラマシリーズがSNSを中心に話題となっている。

 『本当にあったガチ恐怖映像』のオカルトライター鬼頭(賀屋壮也)と編集マンの江尻(加賀翔)の元に一本のホラー映像が届く。そこには、廃墟に忍び込んだ女子高生が不可解な現象によって次々と首を吊る映像が収められていた。しかも、それは実際にあった集団首吊り事件を収めたものだった。編集マンの江尻は、映像の中に違和感があることに気がつく。それは、想像を絶する恐怖のはじまりだった──。

 こうあらすじだけ書くと、定番のホラードラマのように思える。しかし『この動画は再生できません』はただのホラードラマじゃない。恐怖映像を映像制作の視点で解体し、映像に残る違和感(心霊現象)を「どういう風に作られたか?」「これを撮った制作者の意図は?」を解き明かすミステリ作品なのだ。そう、本作はモキュメンタリーホラー×ミステリというジャンル横断の作品なのである。もうコンセプトだけでワクワクする内容だ。そして実際、本作はとても面白い。というわけで、本記事では『この動画は再生できません』の魅力をご紹介。

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 『この動画は再生できません』はテレビ神奈川で放送され、Amazon Prime Videoで配信されている全4話、1話25分で構成されたミニシリーズだ。モキュメンタリーホラーといえば、今や定番のジャンル。モキュメンタリーホラーにコメディをかけあわせた『コワすぎ』シリーズや、『監死カメラ』シリーズ。それからあまりの恐怖に心に重大なトラウマを残した人がいるという(筆者のことです)『フェイクドキュメンタリーQ』『フィルムインフェルノ』など、低予算で作れることからか意欲的なモキュメンタリーホラーが多い。

 また、視聴者投稿企画ものも夏休みのゴールデンタイムに放送されていた心霊番組を好んでいたキッズ(筆者のことです)にはお馴染みだろう。『この動画は再生できません』はそういったモキュメンタリーホラーや心霊番組の投稿映像を取り上げ、それをミステリにするという発想の転換が行われている。モキュメンタリーホラーとミステリの組み合わせた作品といえば『放送禁止』シリーズがあるが、本作の特徴はミステリとして解体し尽くしてしまうことだろう。

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 本作の構成はこうだ。まず視聴者投稿企画に寄せられた恐怖映像が流れる。それからオカルトライターの鬼頭と編集マンの江尻が映像に残る違和感をもとに隠された謎を解く……といった感じだ。視聴者は存分に恐怖映像を楽しんだ後に、ホラーがミステリとして解体されていく楽しさを味わうことができる。このジャンルが切り替わる楽しさは唯一無二だ。この構成の秀逸さはそれだけでない。それぞれ12~13分の「出題編(恐怖映像)」と「解決編(謎解き)」に別れているため、エラリー・クイーンの本格ミステリのように「読者(視聴者)への挑戦状」が成立するのだ。これはミステリ好きの琴線をくすぐる構成だ。

 テレビ神奈川の放送では出題編と解決編が別日に放送されており、Prime Videoではいつでも好きなタイミングで再生を止めることができる。推理しようと思えば、いくらでも推理することができるのだ。しかも面白いのは、これによって恐怖映像パートにドキドキ感に「今の現象はなんなのか?」「どういった伏線が隠されているのか?」そういった謎解きのワクワク感も加わることだろう。また、解決編を観たあと出題編を見返して伏線の確認や新たな謎を見つけるのも楽しい。ジャンルが切り替わるギャップ的面白さだけではなく、恐怖映像のほうにも味変が起こるのだ。それから肝心のトリックも唸らされることがある。特に心霊現象ではお馴染みの現象であるオーブをロジカルに解体してみせたのは、思わず脱帽した。モキュメンタリーホラー×ミステリのジャンル横断だけでなく、素直にホラーとミステリを分けて考えても楽しめる作品だ。

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