『余命10年』小松菜奈と坂口健太郎が魂を燃やす 1年間の撮影で深まった人物造形
10月20日放送の日本テレビ系『金曜ロードショー』で、『余命10年』(2022年)が地上波初放送される。本作は、切なすぎる小説としてSNSなどで反響が広がり、ベストセラーとなった小坂流加による同名小説を映画化。小説の文庫化を待たずして亡くなった著者の想いを引き継ぎ、「10年」の物語を全身全霊で演じたのは小松菜奈と坂口健太郎。『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』などで知られる藤井道人監督が、小松と坂口と共に戦友のような気持ちで戦い抜いて作り上げたという必見の感動作だ。
数万人に1人という不治の病で、余命が10年だと告げられた二十歳の茉莉(小松菜奈)。生きることに執着しないように、決して恋はしないと心に決めて生きていた茉莉だったが、中学の同窓会で再会した和人(坂口健太郎)と惹かれ合ってしまう。病に侵されていることを隠し、どこにでもいる男女のように、和人と楽しい時を重ねてしまう茉莉は、彼への思いが募るにつれ、これ以上和人といたら死ぬのが怖くなるという気持ちに胸が締め付けられていく……。
映画『余命10年』の撮影は、約1年かけて行われ、藤井監督は四季の移り変わりを撮り続けながら、茉莉と和人のかけがえのない一瞬一瞬を鮮明に映し出している。長期間の撮影に臨んだ小松と坂口は、茉莉と和人が一緒にいることの幸せな時間、そして幸せであればあるほど切ない10年間を、全力で演じ切っている。
小松は、茉莉役のオファーがあった際、原作を読んで著者自身の気持ちも茉莉に込められていると感じ、著者の家族に会うなど、段階を踏んで役作りをし、撮影に臨んだという。さらに、藤井監督の作品への意気込みと熱量が伝わってきたため、魂を燃やして演じたいと思ったという小松。減量も必要となった1年に及ぶ撮影に挑んだ小松の力演は、演技というよりも茉莉というキャラクターそのものに見え、映画を観ている間、完全に茉莉に感情移入し、和人と共に生きたいと願う茉莉を心から応援している自分に気づく。
和人の前では、病気にかかっていない、ごく普通の女性を装いながらも、家族に支えられ、常に心配されている茉莉。原日出子と松重豊が演じる両親や、黒木華が演じる姉の前では強がったり、弱音を吐いたりする茉莉を表現する小松が本当に素晴らしく、特に茉莉が母親に本音を打ち明けるシーンは感動的だ。