脹相はなぜ“怒っている”のか? 呪胎九相図の仏教絵画との関係や物悲しい過去を振り返る

脹相の“怒り”を呪胎九相図と共に徹底解説

 それにしても興味深いのは、彼の立ち位置。彼は「呪霊が描く未来の方が俺たちにとって都合がいい」という理由で弟たちに偽夏油ら呪霊側につくことを宣言していた。呪胎九相図は特級レベルの呪物だが、その高い呪力は母親の恨みによるものなのか明確にはわかっていない。壊相が釘崎と対峙した時に振り返っていたが、彼らに母親の記憶はなく人間も術師に対しても特段恨みがあるわけではないと感じているのだ。

 母からの呪いの意識は引き継がれていない。だからどっちの味方というわけでもないし、人間でも呪霊でもある彼らはそれでも呪霊(漏瑚たち)が描く未来……つまり、呪霊が人間の立場に代わる世の方が自分たちにとって生きやすいと感じた。確かに、脹相は普通の人間に見えるが壊相は人前で肌を出せないし、血塗に至ってはあの見た目で「人間」と主張しても誰も信じてくれないだろう。そう考えると、望まない形でこの世に生を受け、望まない形で封印から勝手に解かれて受肉した彼らはこの呪いの世界における被害者でもあるのではないだろうか。

 五条悟との戦いでやる気がなかったのも、渋々だが何の躊躇いもなく人を殺したことも、脹相にとって人間も呪霊もどうでもいいことの表れだ。だって、どちらにもなりきれないから。150年間、お互いの心の拠り所にしてきた兄弟のことだけが重要な脹相は、その生きづらさも含めて兄弟たちを幸せにしたいのである。そんな兄弟を、虎杖は殺した。仇の相手に向けられるそれは、赤血操術の構え。加茂家相伝の術式を彼が繰り広げる理由も、その過去に関係している。原作でも注目された虎杖と脹相の戦いは、果たしてどのように描かれるのか。

■放送情報
TVアニメ『呪術廻戦』第2期
MBS/TBS系にて、毎週木曜23:56~放送
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、中村悠一、島﨑信長、櫻井孝宏、諏訪部順一、三瓶由布子
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史、小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
「渋谷事変」オープニングテーマ:King Gnu「SPECIALZ」(Sony Music Labels)
「渋谷事変」エンディングテーマ:羊文学「more than words」(F.C.L.S./Sony Music Labels)
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp

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