朝ドラ『ブギウギ』蒼井優の言葉に宿る厳しさと優しさ 師匠として鈴子に授けた大切なこと

『ブギウギ』礼子の言葉に宿る厳しさと優しさ

 『ブギウギ』(NHK総合)第8話で、ミスをきっかけに鈴子(澤井梨丘)、幸子(小南希良梨)、辰美(木村湖音)の同期3人は仲違いしてしまった。その日も鈴子は礼子(蒼井優)が1人で練習に励む姿を覗き見る。

 第8話で礼子は鈴子に大切なことを教えてくれた。

 鈴子は公演での失敗を礼子に謝罪する。礼子がニコリともせず「話していいなんて言ってないけど」と鈴子に言った際はドキリとしたが、礼子は鈴子を相手にしないわけではない。礼子は淡々とした口調で「ねえ、あなたたちのミスで一番迷惑を被ったの、誰だと思う?」と鈴子に問いかけた。鈴子たちは本番でアオイ(翼和希)の衣装の羽を忘れた。羽なしで踊り切ったアオイを思い出して、鈴子は「それは……やっぱり橘さん」と答える。

「違う」
「お客様」

 礼子は鈴子をまっすぐ見つめたまま、「お客様はね、現実から離れたくて劇場にいらしてるの。そのお客様に、私たちは一瞬でも現実を感じさせちゃ駄目。それはプロじゃない」と説く。礼子演じる蒼井の佇まいは、劇団を引っぱるトップスターとしての気品にあふれている。しかしただ優美であるだけではなく、新人の教育係として鈴子たちと向き合うアオイとはまた違った厳しさをも感じさせる。プロとしての責任を、憧れの世界へと足を踏み入れたばかりの鈴子はまだ深く理解できていない。だからこそ礼子は、鈴子の目を見てしっかりと伝えていく。礼子は鈴子に目線を合わせるとこう問いかけた。

「あなた、どうして踊るの?」

 鈴子にはまだ「踊りたいから」以外の答えを知らない。けれど、礼子は鈴子の答えを否定せず、真摯に受け取った上で「その先を、これからは考えていきなさい」と伝えた。

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