朝ドラ『ブギウギ』澤井梨丘の演技が圧巻! 自己肯定感爆高な主人公から目が離せない
大人といえば、本作の大人キャラクターが子供に対してちゃんと大人でいることも好感度が高い。学校の先生は卒業後の鈴子に進路について一言言うタイ子をたしなめる。そして鈴子もまた、母ツヤにたしなめられるのであった。「鈴子がだいじょうぶや言うても、タイ子ちゃんはだいじょうぶやないねん。誰もが言われると心底つらいことが一つや二つはあるもんや。それを気にせんでええって軽う言うんは違うと思うねん」という彼女の金言は、大人になった私たちにも大切なことが何か思い出させてくれる。嫌なことを嫌と言うことが難しいこと、そして大切なことも。鈴子が自分の夢に対する自覚を持った時、それに疑問を持たずすぐに肯定したり、子供にお金の心配をさせなかったり、カッコいいお母さんだ。
父の梅吉もおっちょこちょいだけど、優しく鈴子を信じてくれる。しかし、この2人の過去には何やら隠し事もありそうだ。実家での出産を終えたツヤは、双子ではないのに2人の子供と共に帰宅した。そのことについて梅吉も疑問を抱いていた点が気になるところ。こんなふうに、鈴子の日常と夢に歩みを進めただけではなくミステリー要素も忍ばせている点が本作の脚本の妙だった。
朝ドラの“子供時代”において、子役に向けられる期待とプレッシャーは計り知れない。しかし、その中でキャラクターに興味を持たせるだけでなく共感と寄り添う気持ちを抱かせてくれる素晴らしい子役が稀に登場する。鈴子を演じる澤井梨丘は、本作が初めてのドラマ出演とは信じられないくらい、ちょっとした表情や仕草で役の感情を表現した。何より鈴子は歌が上手くないと物語全体の説得力に欠けてしまうわけで、その期待を優に超えるどころか鈴子が初めて“自分のために”歌ったことを自覚した瞬間のハッとした表情など、その演技の機微が素晴らしい。第1話で描かれた趣里によるパフォーマンスも圧巻であったが、澤井による鈴子の日々も今はもっと観てみたい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK